針灸の風邪の治療と風邪薬(総合感冒薬)の風邪の治療の違い
ひとくちに風邪を治すといっても、針灸の風邪の治療と風邪薬(総合感冒薬)の風邪の治療では大きな違いがあります。
風邪薬(総合感冒薬)は風邪の症状を感じなくさせ、その間に身体のほうの自然治癒力で治ってくれるのを期待するやり方。一方 針灸は自然治癒力そのものを向上させ、治るようにしむけるやり方です。
伝統的中国医学では、『かぜ』の発熱を体内のいい気(正気) と悪い気(邪気) の結果と分析しています。邪気と正気が闘った結果として発熱します。正気のしっかりした人は感染しません。比較的、正気の強い人が感染すると熱を出しますが、早く治ります。お年寄りなど正気の弱い人が感染すると、あまり発熱しませんが、長引きます。発熱らしい発熱をしないからたいしたことはないと考えるのは大間違いです。体のだるさや、場合によっては咳や痰に長いこと苦しむことになります。
「若いときは熱を出したけれど、近頃は熱はでなくなった。だから年取って丈夫になった」と話される患者さんが結構いらっしゃいます。一ヶ月くらい咳が続いて、背中が痛くてしょうがないというのが来院された理由だったりします。
まず正気に細心の注意を払う
私は、患者さんに熱があるからといって、すぐ熱を下げることを考えません。まず、正気の状態に注意を払い、熱は安易には下げません(針灸も その気になれば簡単に熱をさげることができますが)
西洋医学でも最近は解熱剤が問題視されています。発熱はウイルスに対する正常な免疫の反応であり、解熱剤で無理に発熱を抑えることは、免疫の働きを邪魔することにつながります。熱があっても 頭痛がなくて楽な状態にもっていくことに気を配ります。
風邪薬(総合感冒薬)を飲んで 一時的に症状が 軽くなり治ったと錯覚してしまうことが じつは一番 問題だと思っています。治ったと錯覚すると無理して働き、免疫力が低下し 風邪を長引かせることになります。風邪のウイルスや細菌は 症状が軽くなっていても体内で変わらず増殖を続けているのですから。
風邪薬のCMも、治ったと錯覚するように私たちを毎日 洗脳していますから、錯覚するのも無理ありません。休息をとって免疫力を回復させることの大切さを忘れてはいけません。
2003年5月30日には厚生労働省から「一般用かぜ薬による間質性肺炎に係る使用上の注意の改訂について」という発表がありました。間質性肺炎とは別名 肺線維症(はいせんいしょう)正常な肺は、目の細かいスポンジのような構造をしていて、息を吸えば膨らみ、息を吐けば縮むという動きをスムーズに行っています。何らかの原因で、この柔らかい肺に、線維化が起こり、肺が固く縮んでゆき、ついには呼吸ができなくなり、死に到ることもある病気です。こんな副作用は26例とごく少数なのですが、風邪薬の濫用をいましめるものです。
総合感冒薬の分析
総合感冒薬にはどんなものが入っているのでしょう。例えば、CMでよく登場する『プレコール持続性カプセル』をとりあげてみます。『朝と夜だけ飲めばいい』というヤツです。
総合感冒薬の多くは成分的には似たり寄ったりです。解熱鎮痛剤のアセトアミノフェンやイソプロピルアンチピリン などを配合しています。また、抗ヒスタミン剤です。 さらに麻薬性鎮咳剤のリン酸コデイン や覚醒剤の原料にもなるエフェドリン、カフェイン なども入っています。
総合感冒薬『プレコール持続性カプセル』の成分 |
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成分名 |
働き |
副作用 |
イソプロピルアンチピリン |
解熱剤 体温は一過性に平熱よりも下がることがある |
胃腸障害を起こす |
アセトアミノフェン |
解熱剤 頭痛,刺痛,月経痛,筋肉痛など比較的緩和な疼痛に有効 |
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マレイン酸クロルフェニラミン |
抗ヒスタミン剤(くしゃみ、鼻水) 眠気おこる |
眠気 |
リン酸ジヒドロコデイン |
アヘン由来の止咳薬(咳止め) |
中毒性あり |
塩酸メチルエフェドリン |
麻黄 由来の気管支拡張薬(咳止め) |
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カンゾウ(甘草)エキス |
甘草由来の消炎剤 |
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無水カフェイン |
頭痛、眠気の除去 大脳皮質に作用する中枢興奮薬 |
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このような総合感冒薬を日ごろから平熱35℃ぐらいの人や免疫力の弱っている元気のない人が飲むと、本来、発熱すべき時に発熱しません。
なんだかだるいなあといった状態が続いているうちに、風邪をこじらせる場合もあります。
針灸の治し方

患者さんが総合感冒薬を飲んで、ちょっとこじらせてから来院された場合
患者さんに針灸治療後に 軽く発熱する場合があることを伝えます。土曜日や日曜日なら良いですが、月曜日や水曜日なら仕事の事情などに注意して、発熱の程度 時期を加減します。この辺が腕のみせどころです(^^;)
発熱すると頭痛に苦しむことが多いのですが、事前にきちんと気の流れを通しているので、頭痛もほとんどおきません。治療して、少し発熱して、一晩は熱っぽく、次の日にすっきりするというのがよくあるパターンです。治っていただいて信頼を得た後に、『総合感冒薬を飲まないで、針灸した方が風邪がきちんと治ります』と伝えます。経験から言っても、最初から結(ゆい)にきてもらったほうが、すっきり早く治ります。
患者さんが総合感冒薬を飲まないで来られた場合
軽く発熱をはじめているときなどは、頭痛を防いだり 咳やのどの痛み ふしぶしの痛みなどを防ぐ治療をします。発熱しにくいタイプの患者さんは 軽く発熱を誘い 同時に免疫力をあげるようにします。いずれにせよ少し発熱して、一晩は熱っぽく、次の日にすっきりするという形をめざします。
風邪薬(総合感冒薬)を悪者といっているわけではないのです。飲むなといっている訳でもありせん。忙しい毎日の中、風邪薬(総合感冒薬)でとにかく症状を抑えて、がんばらなければならない時もあるでしょう。治ったと錯覚しなければ、今日は無理でも 週末には休もうといった感じで、養生を心がけるようになるでしょう。養生の大切さをわかってほしいのです。
風邪薬のCMが、薬で治ったと錯覚するように私たちを毎日洗脳していますから、自然治癒力、自分の免疫力で治っているのだということを小さな声で伝えたいだけなのです。風邪を治すには免疫力を上げること、免疫力を上げるためには休養が一番 大切です。

