脳の記憶と腰痛との関係
腰自身の異常があってもなくても痛む
MRI(磁気診断装置)など診断機器の発達で椎間板ヘルニアなどの状態がよくわかるようになりました。日本整形外科学会の腰椎椎間板ヘルニアについてのパンフレットにも「MRI画像で椎間板が膨らみだしていても、症状がなければ多くの場合問題はありません」と明記されています。つまり腰自身の異常があってもなくても、しつこい腰痛がおきていることがわかってきました。
腰痛はどこで感じているのでしょう。腰ではありません。脳で感じているのです。
痛みは記憶?
痛みは記憶の要素もあるといわれています。
慢性的な痛みが長く続いていると、脳が「痛み」を記憶してしまい、なかなか治らなくなるという説は有力です。交通事故などで失われた足や手が痛むという話を聞かれたことはありませんか。幻肢痛といいます。脳にまちがった情報が書き込まれてしまったからです。米国のラマチャンドラン博士は幻肢痛を鏡の箱で治療しました。なくした左手の激痛に苦しむ患者さんの残っている右手を鏡に写し、なくなった左手があたかも動いているかのように見えるように工夫しました。左手が正常に動いていると脳に錯覚させたのです。すると左手の激しい幻肢痛が消えてしまったのです。脳の「痛み」の記憶を消し去ることに成功したのです。
針灸にも残っている右手や脚をつかって幻肢痛をとる治療法があります。ツボを使って脳にまちがって書き込まれた情報を正しく書き直しているのです。しつこい慢性腰痛には、じつは幻肢痛のように記憶された痛みの要素があることが多いのです。右手や脚のツボに鍼をうつ行為はじつは、ツボを使って脳を刺激している行為なのです。脳を刺激し痛みの記憶情報を書き換えていきます。
脳の科学がもっと進化し鍼灸が再評価されることを期待しています。鍼の刺激と脳の関係を細かく調べる研究は米国と中国で進んでいます。

