小学校の時からパニック障害や対人恐怖に苦しんできた30代の女性です。うつ病と診断されています。小学校高学年の時に教室で嘔吐してしまい、それ以来 嘔吐してしまわないかと恐れるようになりました。吐き気を感じると自傷行為でまぎらわせていたそうです。両腕の肘から手のひらにかけて内側にびっしりとリストカットの痕があります。
「あなたのやったことはじつは治療行為です。リストカットはちょっと楽になるかもしれないけれど危険だし社会的に損します。これからは小指と薬指と中指を爪もみしてください。」とお願いしました。女性がリストカットしていたのは肘から先の腕の内側、厥陰心包経(けついんしんぽうけい)という経絡(けいらく、気の流れる道)のラインです。厥陰心包経は寧神(ねいしん)、気持ちを落ち着ける働きもあるし、降逆(こうぎゃく)吐き気やのどのつまり感を和らげる作用もあります。リストカットではなく指もみで同じ作用を狙いました。もちろん鍼灸治療でリストカットしたくなる精神状態を治します。
10年前にある専門学校を疲労困憊しながらも卒業されましたが、国家試験に集中することはできずそのままになっていました。今回は約13カ月 約70回の鍼灸治療をして国家試験に挑戦し見事 合格されました。試験合格後にアンケートに回答していただきました。
治療後のアンケートでは、「よい効果があった。少し苦痛はあるがずいぶん楽になった。」「総合的にいって治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は3である。」という回答と以下のコメントをいただきました。
治療を受ける前は1日のほとんどを布団の上で寝ていました。毎日 体が重く起き上がるのもしんどかったのですが結鍼灸院で鍼を受け始めて徐々に体を起こしていられる時間が増えていきました。今まで諦めていた国家試験の勉強も始めることが出来て浮き沈みの激しい体調変化にも付き合っていただき無事 合格することができました。結鍼灸院に出会えて良かったです。
4年ぶりに車で旅行にも行くことが出来るまで気力体力共に良くなりました。藤井先生 本当にありがとうございました。以上 コメント 手書きのコメントは以下からご覧ください。http://yuisuita.sblo.jp/archives/20240701-1.html
彼女の症状を長引かせた原因のひとつは学校での「いじめ」です。そして彼女を合格させたのはお連れ合いの献身的な愛のサポートでした。2024年7月掲載
島田(仮名)さんは30代初めの青年です。数年前は全般性不安障害、パニック障害と診断され当院に治療に来られていました。当時の鍼灸治療の一番の目的は不安で乗れない新幹線に乗れるようになることで、それはうまくいき治療は終了しました。
今回は4ヶ月前から夜、眠れず、昼間 起きていられないという症状がひどくなったと来院されました。睡眠導入剤も効きません。昼間起きているよう努力はするのですが、たまらず寝ることもよくあるようです。こま切れの質の悪い睡眠の典型です。
2ヶ月前からは身体中に湿疹が出るようになり、夜はかゆみがひどくなりよけいに眠れない。概日リズム睡眠障害、睡眠相後退症候群(DSPS)ともみえるような症状ですが、この場合は気分障害からくるものなのでしょう。島田さんは今回は気分障害と診断されているようです。気分障害とはうつ病や双極性障害を含む広い概念です。
数年前のような不安感はなくなったとのことですが、抗うつ剤は飲み続けていて、疲れやすさ、手足のしびれ感の訴えもあります。
1ヶ月に5回治療したところ、夜はすぐに眠れるようになり、昼は起きていられるようになりました。2回ほど治療したところでかゆみが引き始め、3週間後には湿疹はきれいに消えました。眠れなくなると、だんだんと身体を落ち着かせる陰(いん)という成分が減少し、皮膚のかゆみになり、やがて湿疹になることがあります。こういう時、伝統的中医学では睡眠と湿疹を一連のものと考えて治療します。みなさんも睡眠時間が極端に少なかった時、妙に興奮した経験はありませんか。身体を落ち着かせる陰(いん)が減っているからです。
◆アンケートでは「非常によい効果があった、ほとんど完全になおり苦痛がない」を選択。以下のようなコメントをいただきました。
当初の気分障害での体のだるさ、日中起きていられない、夜の睡眠障害、体全体の湿疹に悩まされてきました。2回ほどの治療で夜もぐっすり寝つけるようになり、4ヶ月間毎日飲んでいた睡眠導入剤も全くいらなくなりました。それに伴って約一週間ほどで湿疹もほとんどひいていきました。同じく体のだるさも、一週間ほどでかなりなくなり、昼からも動けるようになりました。コメント以上
田丸(仮名)さんは20代後半の女性です。長く月経前症候群(PMS)に苦しまれていました。月経前10日~7日前から気分が落ち込み、身体がだるくなります。ピルを飲んだこともありますがうまくいきませんでした。体調を崩して職場をやめた時に心療内科に通い始め、抗うつ剤(SSRI)パキシルを飲み始めて3年になります。アルバイトに半年前から行き始め本人いわく「なんとか続いている」状態です。
本人の希望もあり月経前10日の間に2回ほど治療することにしました。2ヶ月すると月経前の気持ちの落ち込みもなく生理痛もほとんどなくなりました。パキシルをやめたいという本人の希望で週に1回治療するように変更。1ヶ月かけて薬を減らし、ついに薬をやめることに成功。さらに1ヶ月治療してから、アンケートを書いてもらいました。治療を始めて2ヶ月で月経前症候群(PMS)が治り、3ヶ月目には抗うつ剤(SSRI)をやめることができました。
田丸さんは以下のように回答されました。
◎非常によい効果があった、ほとんど完全に治り苦痛がない。
◎治療前の苦痛を10とすれば今は1である。
ひどい時は2週間前から気持ちが不安定になり、だるくて何もしたくない気持ちになっていたのですが、治療していただき不安定になっても1~2日で済むようになりました。すこしずつ体のだるさが軽減されていき気分に体調がひっぱられないようになっていきました。肩こりもかなり減りました。その中で以前はいろいろなことに落ち込みがちだったのを「過ぎたことは過ぎたこと、今は今」と頭をきりかえていけるのも早くなりました。薬であまり考えないようにしていたのですが、今は薬を飲まず、考えても落ち込まず、冷静に落ち着ける時間が増えた気がします。仕事も抱えすぎずしんどくならないようにこなせるようになりました。本当にありがとうございました。
以上
田丸さんはたんなる月経前症候群(PMS)だけでなく抑うつ状態にあったようです。心療内科では簡単に薬がでますが、私はちょっと疑問に思っています。日本うつ病学会が今年7月にうつ病の治療指針を出し安易な抗うつ剤の使用をいましめています。
詳しくは7月31日付けのブログをご覧ください。
http://yuisuita.sblo.jp/archives/20120731-1.html
自筆のアンケートの回答はこちらから
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。
田辺(仮名)さんからのメール
長らくお世話になりました。田辺(仮名)です。
おかげさまで、体調も大変良くなり、日常生活を難なく過ごしております。
最初に通院し始めた頃を振り返ると、驚くばかりです。
> 設問
> 2. よい効果があった。少し苦痛はあるがずいぶん楽になった。
> 回答
> 以上 1~4のうち、私は【2】です(数字を記入願います)
> 総合的にいって治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は【1 】である。
あとは生活習慣であるとか、性格とか価値観などの内面の問題だと思いましたので、身体に負担がかからないようほどほどに生きていこうと思った次第です。
メールで失礼いたしますが、本当にありがとうございました。
また体調に不具合のある際には、治療をお願いしたく思っております。
20XX年3月~翌年の4月まで約1年治療しました。田辺(仮名)さんは30代の男性です。今はうつ病もすっかり回復、新しい職場で元気に正社員として勤務されています。
20XX年3月時点では数ヶ月前に長年勤めていた会社をうつ病で退職されたところでした。3年ほどは休職と復職を繰り返していたそうです。ある資格試験に向けて勉強されていました。治療を始めて1ヶ月ほどたった頃のメールです。
田辺(仮名)さんからのメール
おかげさまでからだの根っこの部分が、軽くなってきているような気がしております。
ただ、胃腸風邪らしき症状の方が、すぐれず、とりわけ背中が痛く、頭がボーっとして何にも集中できないという状態になっています。
食欲は無いわけではないですが、いつもよりは控え目です。下痢は続いています。
目の疲れはひどいです。試験が近いこともあり、それに対する「単なる」プレッシャーかとは思います。
中略
気分的には「焦り」というレベルではなく「大変に焦っている四面楚歌」というところまで来ていると思いますし次の職についても「厳しい雇用情勢」という暗いニュースばかりです。
市販の風邪薬であるとか、ユンケルのような滋養強壮剤は併用してもよろしいのでしょうか。
昨年、退職するまでは、一日あたり栄養ドリンク2本、○○ナミン錠剤3錠 タバコ1日2箱、清涼菓子1日1箱、コーヒー1日6~7杯というような状況で無理をして仕事をしていました。
いまさら栄養ドリンクの類には頼りたくない・・・という思いがあります。
しかし、試験まであと○○日しかないということもあり、なんとか態勢を立て直したいというのも切なる思いです。何か全てに疲れました。本日、伺いますので、 どうぞよろしくお願いします。
この時はなかなかしんどそうだったのですが、その後は資格試験に無事合格、新しい職場にも就職され仕事も慣れたあたりで、結(ゆい)を卒業していかれました。
素人の私たちでは、本人がなぜ苦しいのか、という基本的な原因すらわからず、困惑しております。
ある患者のお孫さんからメールで質問がきました。
お孫さん
私には現在、○○市に77歳の祖父がおります。 祖父は過去に肝臓と、肺気腫で入院治療しておりました。
10年ほど前に、風邪をこじらし、寝込んだのち、精神神経科に通院しておりました。そこでは、正確な病名は忘れてしまったのですが、抗うつ剤を処方され、 後10年服用し続けています。最近では、胸の苦しさや、頭痛を訴え、その都度頓服を服用するという毎日です。日増しに、その訴えが増えたので、総合病院に かかり検査もしましたが、異常は見つかりませんでした。
本人は、非常につらいと思いますが、病院嫌いであり、治療に対して前向きにはなれないでいます。物忘れもあり、痴呆が始まっているようにも見受けられます。また、無気力であり、悲観的な面もあるので、うつ病の懸念もあります。
ともかく、素人の私たちでは、本人がなぜ苦しいのか、という基本的な原因すらわからず、困惑しております。
◆私
メールの文章から受けた印象では 老人性うつ病の疑いを感じます。私は針灸の仕事をしておりますし、針灸治療も選択のひとつではないかと思いますが、とに かく患者さんを丁寧にみて患者さんの誇りを傷つけないようにあつかってくださるような医療機関にかかられることをお勧めします。
お孫さん
先生のおっしゃられる通りだと思います。祖父は、以前、総合病院に連れて行ったときに、まともな治療をしてもらえず、かなりのショックを受けていたと聞き ました。もともとプライドが高く、頑固な気質もあり、最近では病院にいくことが嫌になっているようです。まわりにいる私たち自身も、どこかで祖父の誇りを 傷つける言動をしていたかもしれません。これを期に、親族全員で考えていきたいと思います。
お孫さん
今日、母から結(ゆい)針灸院にうかがった際の報告を受け取りました。お忙しい中、ご丁寧に診療してくださり、大変にありがとうございました。祖父も「頭痛が楽になり、今まで苦しかったが、やっと良くなった。」と大変に喜んでおりました。
メール引用以上
初診では「メールで受けていた印象よりあなたは元気だ。身体も年のわりにはしっかりしている。ただ身体のバランスが乱れている。バ ランスを回復するのはそうむずかしいことではない。治療すれば楽になる」と患者さんを励ましました。いままで否定的なことばかりいわれていたことが予想で きますから、励みになるような言葉が必要です。痴呆ではなく老人性うつ病と判断しました。
最初は車に乗せてもらって来院されましたが、2回目は電車利用。電車に乗ったのは15年ぶりとのこと。結局3回の治療で「胸の苦しさや頭痛等がなくなった。頸のつらさもない。」ということで治療を終了しました。遠方からの来院も負担のためです。
老人性うつ病の治療は針灸治療に加え家族の協力と理解が大切です。高齢でも意外と早く治ります。
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。
自分をコントロールする
急に寒くなると意外な症状も悪化します。パニック障害、全般性不安障害の方やうつ病、自律神経失調症の方の中には不安感が強くなったり、息苦しさや吐き気が強くなったりした方がいらっしゃるはずです。寒さもストレス、寒さが気のめぐりを滞らせて症状がひどくなります。部屋全体を適度に暖めてください。針灸治療を受けていただければ一番いいのですが、部屋を適度に暖めるだけでもある程度改善します。
とくに朝、起きる時に部屋が暖まっていることが大切です。
オイルヒーターや床暖房をつけたままにして部屋を暖めたり、エアコンやファンヒーターを起床の1時間ほど前につけたり、いろいろと工夫してみてください。先日治療したパニック障害の女性の不安感がなかなかおさまりませんでした。よくよく聞くとエアコンが故障し、寒さに震えていらっしゃいました。エアコンが直ると、針灸治療も効きがよくなり不安感もなくなりました。「暖めるだけでこれだけ違うんですね。」とその女性。患者さんの生活上の問題点を探り当て、適切に指導していくことも大切な治療です。「こうすると悪くなる」を体得した患者さんは自分をコントロールすることがうまくなり、ちょっとした症状の悪化にもあわてなくなります。結(ゆい)針灸院は針灸だけで治療しているわけではないのです。
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。
うつ病や自律神経失調症の患者さんを多数治療してます
うつ病や自律神経失調症の患者さんを多数治療しています。今回は仕事の仕方のお話です。うつ病や自律神経失調症の患者さんに質問することがあります。
A.人当たりもよく、仕事はすぐに引き受けてくれて、それなりにしっかりやってくれるのだけれど1~2ヶ月もすると急に病欠で2~3日休んでしまい、仕事が予定通りに進まなくなる部下。
B.仕事を回そうとすると、「ここまでは出来るけれどこれ以上はできません」とはっきり言う。少々生意気なところもあるが、その代わり引き受けた仕事はきちんとこなしている部下。仕事が少し遅れることはあるが、遅れることを途中で報告してくる。会社を突然休むこともない。
あなたが上司だったらどちらの部下が使いやすいですか、信頼できますかと質問します。患者さんは仕事を抱え込みすぎたり、無理な要求を「はいはい」と引き受けたりする傾向の方が多いのです。できない量の仕事を抱え込んで倒れるよりは、適正な量の仕事をきちんと安定してこなしていく方があなたにも、上司にも会社にもいいのではないのでしょうかと話します。
あなたが倒れると上司も監督責任を問われます。できない上司、わかってくれない上司かもしれないけれど上司もつらいのです。仕事を抱え込みすぎるあなたの傾向を見抜き、適正な仕事量を按配し、うまくいったらきちんとほめてくれる。そういう理想的な上司はそうそういるものではありません。これ以上はできませんとはっきり主張しわかってもらうことは大切です。正しい、間違っているという話しではありません、交渉して妥協点をみつけてください。そんなふうに言う時もあります。
鍼灸治療して回復していくと、患者さんは落ち着きをとりもどし、仕事に優先順位をつけてなんとか処理していけるようになります。つらかった頃に戻らないように仕事量を調整します。「何であんなに、ものにとりつかれていたように働いていたんだろう」という声も聞きました。鍼灸治療は元気になるだけでなく不安をなくし落ち着きを取り戻す効果があるのです。
うつ病や自律神経失調症にならないにこしたことはありません。時には少しだけアクセルをゆるめましょう。仕事にメリハリをつけるのです。「商売は牛のよだれのごとく」という言葉もあります。牛のよだれのように細く、長く、粘り強く続けていくことが大切という意味。人生は結構長いもの。低成長時代の今、燃え尽きるより「牛のよだれ」です。
うつ病を経験して変わった仕事の仕方
うれしい便りをいただきました。前号の「うつ病にならない仕事の仕方」を読んだ読者の方からのメールです。
この方はうつ病で休職された後、見事に職場復帰された結(ゆい)の患者さんです。うつ病を経験し人生をもっと楽しむようになった方です。
こんにちは、先生。今年の年始年末休みと、この連休も、ゆっくりと過ごせました。
いままでにない、とても心地いい、お正月でした。
結(ゆい)通信No.279「うつ病にならない仕事の仕方」を、拝読させて頂き、ふっとX年前の今ごろの時期を思い出して、自分ながら、「ぷっと」おかしく笑う思いです。X年前は子どもが生まれたことなどで、ごたごたしていて、仕事も「やらねばらならい」の極致でした。視野、考え方もピンポイント的に狭くなり、自分で自分を追い込んでいました。
今、思うと、偏った自信があり、その自信が仕事を抱え込み、限界を超えていたことに気付かない状態だったと思います。それでも「やらなければならない」という気持ちが先行していました。
初めて、結針灸院に来院して、初診問診の時に、真摯に私の症状を聞いて貰えた時には、本当に安堵な気持ちなりました。今更ながらですが、感謝をしております。
今は、楽観と緊張の調和を図るようにしております。仕事では、やることはきっちりとやる。(まぁ、これは当たり前ですが)できないことはできないと割りきり、自分の立場より1、2段上の立場でものごとを考える。メリハリをつけるようにしています。
プライベートでは、すべてを楽しむように考えています。
例えば、家族サービスも自分が楽しくなければ、家族も楽しくないと思います。自分も楽しみ、家族も楽しむというふうにしています。
※某読者からのメールを掲載していますが、個人情報保護の観点から、読者の年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。某読者さんメール掲載を快諾してくださりありがとうございました。
2010年の治療例
畠山(仮名)さんは30代後半の女性。約10年間パニック障害に苦しまれました。
1年前の引越しを契機に、うつ病も併発。動悸がして息がつまる、家事も仕事もできなくなり横になってばかりという状態でした。「人の声が幕がはったように聞こえる」という突発性難聴に似た症状もありました。結(ゆい)には家族に付き添われて来院されました。
手には真新しいリストカットの痕があります。週2回のペースで針灸治療を開始しました。家族の方が嫌がる畠山さんを説得し、引っ張ってこられたと後で聞きました。
2回の治療で発作が出なくなり「ラムネのように何錠もかじっていた」という頓服薬(抗不安薬)をやめることができました。数回の治療の後は自分で車を運転して治療にみえられるようになりました。
1ヶ月で料理ができるまでに回復。1ヶ月半後には抗うつ薬(SSRI)を今までの四分の一にまで減薬することができました。
2ヶ月半後には週2回の通院を1回に減らし、仕事も再開されました。
アンケートをお願いしたところ「何年も病人生活が身についている私は、良くなった生活がわからず、普通はどれ?どれ?ととまどう毎日でしたが今はがんばって体も生活に慣れて生活を送っています」との回答をいただきました。
当初すっぴんだったお顔がきれいにお化粧されるようになったのが印象的でした。「手が震えてメイクできなかった」「何をする気もおきなかった」とのことです。症状が良くなるのも早かったのですが、減薬もかなり早いペースで行われました。担当医の先生が畠山さんの意志を尊重されてのことでしょう。
副鼻腔炎、頚椎症、脊中管狭窄症、前立腺肥大症、うつ病と診断された患者さん
みなさんは、病気のデパートのような 患者さんと思われるかもしれませんが、 これぐらいあわせ持つ患者さんは当院では、 そう珍しくはありません。病気は身体の中心線の 任脈(にんみゃく)督脈(とくみゃく)という経絡、 気の流れの上にあります。 任脈督脈をうまく調整していくと、すべての病気 を一度に改善させていくことができます。
貝原(仮名)さんは50代初めの男性、うつ病で休職と復職を何度かされていま す。なんとか復職したものの、もうひとつ身体がすっきりしない、不安感が強く、 眠れないということで09年2月下旬に来院されました。お医者さまからは上記 のようにたくさんの病名をいただいています。数年前に貝原さんの腰のX線写真 をみたお医者さまは「よく歩けますね。70代の老人のような腰の骨ですよ」と 言われたそうで、脊中管狭窄症からくる足のしびれについてはあきらめていらっ しゃいました。
一ヶ月に6回ほど治療したところ、普通に不安感なく仕事ができるようになり、 自殺衝動もなくなりました。よく眠れます。副鼻腔炎からの鼻汁も出なくなり、 呼吸も楽になりました。前立腺肥大症も改善し、小水もすっきり出るようになり ました。足のしびれはなくなりましたが、腰痛が残りました。
その後、週一回の治療を続けたところ、5月の終わりには腰痛もなくなり、頚椎 症からの手のしびれも消えました。5月は神戸発の新型インフルエンザに関連し て貝原さんの仕事が多忙となったのですが、これも乗り切ることができました。
新型インフルエンザ騒動の時に、不安感やうつ症状が再発しなかったので「大丈 夫!あなたはもう治っているよ」と励ましたことが記憶に残っています。
腰のX線写真の様子は今も数年前と同じ筈ですが、きちんと気がめぐるようにな ると症状は消えます。骨は治らなくても、病気は治ります。
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少しだけ変えている場合があります。
ご了承ください。
☆まにあってよかった☆
「復職の時期が、まにあってよかったですね。もうリハビリ勤務も終わりでしょう。」
まにあってよかった1月終わりの山口さん(仮名)との会話です。
ある大手メーカー社員の山口さんとは半年近いお付き合い。
30代の男性です。うつ病で半年の休職の後、リハビリ勤務で 職場復帰したけれど身体と頭がいまひとつ思うように動かない ということで結(ゆい)にいらっしゃいました。
針灸で頭痛や腰痛や手のしびれもよくなりました。集中力も続きます。
リーマンショックの後、少しだけ体調を崩されましたがこれも回復しました。
大手企業でも正社員を標的にした人員整理の動きが一部で始まっています。
完全復帰が今の時期にできてよかった、人員整理の標的にならずにすんだという意味で「まにあってよかった」という言葉になりました。
☆欠勤続きだったけど、まにあってよかった☆
吉永さん(仮名)は40代の女性、腰痛肩こりがひどい、何よりこの疲れた顔がなんとかならないかということで 1月中旬に来院されました。美容鍼がご希望でした。
まにあってよかったよくよく話を聞くと、年末からの風邪が治らない、身体が 疲れてどうしよもない、会社も何日か欠勤してしまったと いうのです。
疲れた顔も身体もなんとかしましょうということで治療を開始、2月初旬にはす っかり元気になりました。
後で話を聞くと、昨年職場を変えて以降、仕事がきつくなった。最近は集中力がなくなり会社にいくのがつらくなっていた。仕事を続けていけるのか自信がなくなっていたとのことでした。うつ病一歩手前といったところです。休職の手前で踏みとどまることができました。「あんまり仕事を引き受けすぎないようにしてください、無理して仕事をかかえこまないようにしてください」とお願いしました。
こちらも「まにあってよかった」というところです。
倒れるまで仕事をする前に休んでください。針灸で身体を調整してください。
針灸はあなたのまにあうはずです。
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少しだけ変えている場合があります。
ご了承ください。
パニック障害の方が近頃はよく来院されています。
今回、紹介するのはお薬を使わず針灸だけで治った例です。
☆パワーハラスメントがらみでした☆
藤田 鉄也さん(仮名)は40代の有名大企業の会社員です。
パニック状態2週間前、仕事中にパニック状態になり、翌週から会社のある駅で降りられなくなったということで来院されました。うつ病の診断を受けています。昨年の今頃いらっしゃいました。症状からピンときたので、2回目の治療の時にお聞きしました。
「あなたがパニック状態になるとき、誰か特定の方がいらっしゃいませんか」と。
やはりパワーハラスメントでした。ある上司に注意されている時に限ってパニック状態が襲ってくるのです。本人は気づいていませんでした。気づきたくなかったのかもしれません。
いったん3ヶ月の休職をするということだったので、復職の時は必ず配転をして、パワハラ上司とはいっしょにならないようお願いしました。
職場の配転もうまくいき2008年初頭には別の場所にある同じ企業の職場に復職。リハビリ勤務を経て、今は第一線で元気に働いていらっしゃいます。投薬は続いていますがまずまずの回復です。
休職中から復職2ヶ月程度は週2回の治療を続け、後は週1回 今は疲労回復と脳を活性化する治療を続けています。
【追記】 2011年夏にはお薬もやめ、元気に働いていらっしゃいます。
☆二人目が欲しいから☆
五十嵐 君子さん(仮名)は30代初めの女性。専業主婦です。
2008年7月頃に来院されました。
不安感、むかつき、頭痛に苦しむ4年前、初めて出産。出産後1年たった頃から不安感にさいなまれるようになり、不安障害の診断を受けました。SSRI等の抗うつ剤の投薬を開始。夫と子どもの3人暮らしでしたが家事も満足にできず生活に支障をきたすようになったため子どもと一緒に実家にもどりました。その後は改善したため実家から夫のもとに戻ることができました。5月からSSRI等の抗うつ剤をやめ、抗不安薬1つだけにしたとのこと。そこから不安感、むかつき、頭痛に苦しむようになりました。2人目の出産を希望しているので、ここでSSRIにもどりたくない。ここ何日か身体がだるく背筋も伸ばせない、別の針灸院で何回か針をしたがいよいよしんどくなってしまう。なんとかならないか。ということで来院されました。
7月に3回治療して頭痛 肩こりはなくなりました。背筋もしっかりのびます。
まだ吐き気 むかつきが残ります。
8月いっぱい治療してほぼ症状はなくなり、薬もすべてやめることができました。20XX年には無事、第2子を出産。不安障害等の再発もなく元気に過ごされています。
針のやり方は治療する鍼灸師によって違います。一度針をしてうまくいかなかったからといって針灸全般を避けないでください。あわない薬があるようにあわない針のやり方もあるのです。たいていは温灸を併用するとあうようになります。きちんと効くようになります。
※ 治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの名前を仮名としているほか、年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少しだけ変えている場合があります。
ご了承ください。
10/3の朝日新聞に次のような記事が載っていました。
覚せい作用のある向精神薬リタリンで薬物依存が起きている問題で、厚生労働省と製造販売元のノバルティスファーマ社は2日、リタリンを処方できる医師や医療機関を限定するなど流通を規制する方針を固めた。薬物依存者が求めるまま、過剰処方している医師の存在が相次いで発覚したため、医療用麻薬並みの厳しい管理をする。
リタリンから抜け出すための針灸
向精神薬「リタリン」の乱用問題で依存症に苦しむ家族会が9月下旬に要望書を出しています。
製薬会社もこれまで、「治りにくいうつ病の薬」としていたのをやめる方針のようです。これで保険診療では使えなくなりますが、自由診療でも簡単に処方できなくするために「リタリン」を使える医師を限定してしまおうというのが今日の記事です。
結(ゆい)にも「リタリン」を飲んでいらっしゃる患者さんがいました。
何年もうつ病に苦しんでいた30代の女性です。結(ゆい)に来院された当時は仕事もやめ、「リタリン」も含め7種類の抗うつ薬、抗不安薬を飲まれていました。
それでもやる気が出ない、すぐに横になりたくなる、1日中ぼおっとしている、悲しくなり泣くことがあるなどいろんな症状をお持ちでした。
時々、中断しながら1年間治療させていただきました。
抗うつ薬、抗不安薬も4種類に減り、残ったお薬もこれまでの3分の1の量ですむようになりました。症状はほぼなくなり、仕事もできるようになりました。遠方に転居されることになり、薬を全部手放すところまではいきませんでしたが、回復されたといえるでしょう。「リタリン」もやめました。
抗うつ薬、抗不安薬をやめるための鍼灸
じつは抗うつ薬、抗不安薬など、薬を減らしていきたい、薬をやめたいから針灸治療を受けてみたいという患者さんが時々来院されます。
ほとんどが20代~30代前半の女性の方です。将来の出産のために薬をやめたいというのがその理由。
一生懸命、お手伝いさせていただいています。
抗うつ薬、抗不安薬などを減らしていきたい、やめていきたいという方はどうぞ針灸をお試しください。
針灸が非常によく効いた例です。毎回、こういう訳にはいきません。
30代後半の女性、2人の小さなお子さんがいらっしゃいます。2人目の出産直後から調子を崩され、育児が十分にできなくなりました。
うつ病と診断され複数の薬を飲むようになりました。周りのサポートでなんとか育児をつづけていらっしゃいます。寝たり起きたりの生活が1年ほど続いています。
「とにかくしんどい」「やる気がおきない」「朝が起きづらい」「こめかみが痛む」「不安だ」等々いろいろつらい症状があります。
結(ゆい)での治療に加え、自宅でお灸(温灸)をしていただくよう指導しました。
2週間のうちに3回ほど治療すると、朝きちんと起床できるようになりました。
さらに2週間ほどして、「足が猛烈に痛くなった」と来院されました。
調子がよくなったので、家事育児をがんばりすぎたのです。寝たり起きたりの生活の中で弱ってしまった足腰を急に酷使しすぎたのでしょう。
うつ病になる方には、真面目でがんばりすぎる方が多いものです。
3週間ほどして5回目に来院されたときには薬も一種類だけに減っていました。
家事育児も独力でこなせるようになったとのこと。「疲れをためないよう時々、来院ください」とお願いしておきました。
今回は非常によく効いた例を紹介しました。普通はもう少しかかります。
エアコンの使い方
お休みになる時のエアコンの設定温度に気をつけてください。
家族の方に遠慮して寒いのを我慢していると、身体の陽の気が損なわれます。身体の活動性が低下し身体がだるくなります。
陽の気が損なわれるとうつ状態にもなりやすくなります。
昼間はきちんとエアコンをつけて、疲れないように動いてください。もちろん設定温度は28度以上で。
地球のためにもあなた自身のためにも低くしすぎないようにお願いします。
なお、治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少しだけ変えている場合があります。ご了承ください。
うつ病とひとくちにいっても、仕事を続けながら「なんとなく調子が悪い」といったものから、仕事も続けられなくなり職場をやめてしまっている方までさまざまです。
うつ病という病名は10年ほど前からずいぶん広い意味で使われるようになりました。そのためか若い人ほどうつ病と診断されることにさほど抵抗感がないようです。プチうつという言葉まであります。
最近治療した方から3例を紹介させていただきます。
パニック障害がからんだ40代男性
40代男性が梅雨の頃にいらっしゃいました。
メモをお持ちでそこには症状が箇条書きにしてありました。
ふらつき感。肩のこりはり。頭がのぼせ、ぼおっとする感じ、顔がほてる感じ。急に手足の力が抜けるような感じ。朝早く目が覚めてしまう。イライラする時がある。疲れやすく身体が重い。以上
4~5日に一回、頭がのぼせ手足の力が抜ける感じがして不安感に襲われる。医者からは「パニック障害」と診断されているとのこと。職場のある場所に入るとおこってしまうそうです。両手にしびれ感もありました。こういう症状が1年ぐらい前から続いているといいます。精神安定剤を飲みながら、なんとか仕事は続けていらっしゃいました。
この方は3週間、7回の針灸治療で治りました。安定剤も飲まなくても大丈夫になりました。
肩こりはすぐに消失、疲れやすさも感じなくなりました。顔のほてる感じが最後まで残りましたが、これも消失。治癒(ちゆ)としました。パニック障害がらみでは早く治ったほうです。パニック障害は「電車に乗るのがしんどい」という方が多いのですが、この患者さん、電車は大丈夫で、通院が無理なくできて助かりました。
☆いつも横になっているのは治ったが☆
30代の男性である大企業の社員の方です。
うつ病のため1年近く休職、なんとか職場復帰したものの3~4ヶ月で再び休職。気分が落ち込み、昼も夜も寝てばかりいる毎日だといいます。奥さんに連れられて来院されました。奥さんは昔、結(ゆい)である病気が治ったことがありました。
遠方の方なので、針灸治療は週一回として、毎日 自宅でお灸をやってもらうよう指導しました。お灸といっても温和な熱で跡のつかないタイプです。
1ヶ月ぐらいたったところで、患者さんが重い口を開きました。「第一回目の治療の後、夜になると目がさえるようになり、眠れない」と言われます。身体の変化は毎回治療を始める前に聞いていたのですが、不十分でした。男性のうつの患者さんの中にはなかなか自分のことを話されない方がいらっしゃいます。もう少し配慮が必要でした。
うつ病にもいろいろな状態があります。昼も夜も寝てばかりいる状態を治すのと、昼夜逆転を治すのでは治療の仕方が変わります。治療法をかえると今度は週のうち半分程度は昼間きちんと起きて夜には眠れるようになりました。最初の1回の治療で脳が活性化し、夜起きるようになるとは、実はこちらも予想していなかったので対応が遅れてしまいましたが、改めて針灸の治療効果に驚きました。
治療をはじめて2ヶ月で復職、それから2ヶ月して治療を終わりました。
疲れがとれて、顔やせもした女性の話
9月中旬に今岡さん(仮名)がいらっしゃいました。
40代半ばの女性、自宅で親の介護をはじめて6~7年になります。遠方にお住まいで「疲れた、肩がこった」ということで数ヶ月に1度くらい来院される方です。
今回はとくに疲れがひどいようで「身体がだるい、重い」「とにかくしんどい」「ふらつく、頭がぼおっとする」「目の周りがこる」「目の奥が重くて痛い」という訴え。「近くでマッサージしてもらっても一向によくならない」ということで当院にいらっしゃいました。いつもの肩こりはあまり感じないさそうです。続けて2回、治療してなんとか身体が動くようになりました。
うつ状態に陥りつつあるという自覚は今岡さんにもあり、「なんとか鍼灸で治したい」ということでした。10月に4回ほど治療してすっかりよくなりました。後で聞くと、おしっこの出が悪くなっていたのも治ったとのこと。
鍼灸を再開して2回ほどすると周りから「痩せた?」と聞かれるようになったといいます。体重が減ったわけではないのですが、顔のたるみがとれたので、痩せたようにみえたのです。顔の黒ずみも消えています。今岡さんも「疲れると顔がたるんでくる」「顔がかわる」とおっしゃっていました。
顔には脳を活性化する働きを持つつぼがあるので、私はうつ状態の治療に時々、顔に鍼をうちます。顔の鍼はたるみやしわをとるので、「痩せた?」と聞かれるようになった訳です。
いつもの肩こりは10月半ばに出てきて、いつものように治しました。じつは生体のエネルギーである「気」があまりに消耗してしまうと肩こりは感じなくなることが多いのです。かわりに「重い、だるい、しんどい、ふらつく」となります。「気」が復活してくると、肩こりも復活します。肩こりは「気」が適当に滞ったものだからです。「気」があまりに消耗すると、滞ることもありません。
ちょっと元気になると、しんどい時にはほっておいた掃除などの家事をしっかりやるようになりますから、筋肉痛タイプの肩こりも出るようになります。
50号でうつ病について書いてから、何人かの読者の方と直接、お話ししました(読者=患者さんということも多いのです)精神的な症状というと、西洋薬を飲むか、カウンセリングを受けるかという選択しかないと思い込んでいる方が多いのには驚かされます。
精神疾患の薬の本格的な登場は1960年代から、カウンセリングも1900年代にフロイトが精神分析を始めてからというくらいの歴史しかありません。
それ以前から人は精神を病むことはあったし、治療もあったのです。
養生は精神をすこやかにすることにも通じます
東アジアでは漢方薬や針灸が大切な治療方法でしたし、現在もそのことに変わりはありません。
伝統的中国医学はもともと心と身体をいっしょに考えています。たとえば肺が調子悪くなると、うつうつとした憂いの感情や悲しみの感情にとらわれやすくなると考えます。こんこんと小さく咳を繰り返す患者さんが「どうもやる気がでない」といえば、肺の調子を治すことで、やる気も自然に出てくると考えるのです。
「どうもやる気がでない」「生きているのがいやになる」という患者さんに「部屋の冷房の温度を20度から26度程度に上げることができないかなあ」と助言したりします。
養生は精神をすこやかにすることにも通じます。
例えば、うつ病は 現在では心と身体を活性化するセロトニンやノルアドレナリンといった脳内神経伝達物質の減少によって引き起こされると考えられるようになりました。西洋医学流に心と身体をいっしょに考えるようになったのです。脳を含む身体全体の調整をすることが、神経伝達物質の分泌異常を調整していくことにつながります。
針灸で うつ病の症状が楽になっていく事実から、神経伝達物質の分泌異常を針灸治療が調整していると考えられます。ただ、ここに針をするとセロトニンが分泌されるといったつぼがあるわけではありません。
中国伝統医学の考え方で、いろいろ考えて治療しているだけです。別の道から山を登っているのです。
とことんひどくする前に、気楽に針灸を
抗うつ剤の場合は、最初の2~3週間は副作用だけがでてくる。薬が効いてくるのに2~3週間はかかるといわれています。
薬をやめていくのにも かなりの期間が必要です。新薬のSSRI(選択的セロトニン再取込阻害薬)も「半年~2年くらいは続けることになると思います」と紹介されています。
ちょっとしんどい時に、気楽に治療を受けられ、気楽に治療をやめられる針灸が精神疾患で、もう少し活用されるようになればみんなもうちょっと楽になるのになあ、薬と併用してもいいし、とぼそぼそつぶやいています。
昔は神経症や軽いうつ病なんかはまとめて 自律神経失調症と呼ばれていました。
私のところにも「自律神経が悪いんです」といって来院される患者さんがよくいらっしゃいました。 最近は○○神経症(たとえば強迫神経症)やパニック障害、軽症うつ病と比較的はっきりした病名になり、「軽いうつ病なんです」とか「うつ病かもしれない」といってみえられます。
つらい症状をあらかた伺って、「パニック障害という言葉、聞いたことありますか」と質問すると「医者からそう言われました」と返事が返ってくる時もあります。様変わりしました。
○○神経症と診断してしまうと患者さんもびっくりするし、職場の受けも悪いから、医師も自律神経失調症と言っておく。昔はそんな感じでした。
不況、リストラ等によって精神疾患が増えたといわれています。
たしかにそうなのでしょうが、精神疾患への偏見が和らいだことも、精神疾患の増加に影響しているようです。
偏見が強ければ、だれも精神科には行きませんから、精神疾患とカウントされることもありません。
精神疾患は増えているらしいが
昔、「自律神経が悪いんです」といって来院された患者さんも、今「軽いうつ病なんです」といってみえられる患者さんも実際、同じような症状です。
だるい、疲れやすい、肩がこる、手足がしびれる、寝つきがわるい、朝 早く目が覚めてしまう、あるいは眠くて眠くて仕方がない等々。
自律神経失調症に鍼灸は効くといわれてきましたが、軽いうつ病も同じように鍼灸は効きます。
じつは名前が変わっただけだからです。
いやな時代になって、うつ病も増えたと感じること、間違いではありませんが、呼び方が変わって、身近に増えたように感じてしまっている部分もあるようです。
自律神経失調症でテレビのCMはなかったですが、うつ病ではテレビのCMが流れています。製薬会社が抗うつ剤の売り上げを伸ばすために流したもの。特集番組も多くなっています。
うつ病が増えたと感じる意識にこれらも影響を与えています。確かに「いやな時代」かもしれないけれど、とんでもなく「いやな時代」というわけでもないのかもしれません。
精神安定剤と鍼灸の併用は大丈夫
50号でうつ病について書いたら読者から抗うつ剤、精神安定剤、睡眠薬等の薬との併用はどうですかというメールをいただきました。
結論からいうとなんの問題もありません。
抗うつ剤、精神安定剤、睡眠薬等のお薬を飲んでいらっしゃる方の鍼灸治療はたくさんやっています。 併用した場合、本来のつらい症状が早く楽になります。副作用も楽になります。
鍼灸治療の場合は本来のつらい症状も、薬の副作用もいっしょに軽減させていきます。これによって薬の効きが悪くなるということはありません。逆に薬の効きがよくなることが多いので、患者さんにその旨をお伝えしています。
薬の量を軽減することができます(あくまで薬を処方しているお医者様と相談してから減らしてください)薬の量を減らせることで、より副作用をなくすことができます。
うつ病はどんなふうに治るの?結(ゆい)の場合
メールマガジン結(ゆい)通信70号で老人性のうつ病のことを書いたら、一般的なうつ病はどれぐらいかかるのですかという質問が来ました。
個人差が大きく いちがいにはいえないのですが、最近 私が治療した中から軽症 重症 2人の方を紹介し回答とします。
調子悪くなってから2ヶ月で治療開始した場合
田無さん(仮名)という20代後半の男性。昨年8月終わりに治療を開始しました。
午前中は ぼおっとしやすい。朝はだるい。手足が冷たい。手にしびれ感がある。頭はだるいと訴えていらっしゃいました。
激務を続けているうち、6月ごろから眠れなくなったそうです。
仕事を減らしながらも、仕事は続けていらっしゃいました。抗うつ剤も飲んでいらっしゃいました。
10月終わりまで 9回ほど鍼灸治療をしました。この時点で、眠りが浅いこと以外、自覚症状はないというところまで治りました。
薬は10月中旬にやめることができました。 その後 12月中旬まで4回ほど治療し終了しました。
3月初めに「先生、お元気ですか?治療のおかげもあって、うつの症状も改善し、不眠の症状も改善し、2004年は仕事面で良いスタートがきれました。」との様子を知らせるメールをいただきました。
10年前からのパニック障害にうつ病を併発
田無さんは軽い症例でした。
次に紹介する玉本さん(仮名)は30代前半の男性で、こちらは重い症例です。
うつ病のほかに10年前から続くパニック障害の訴えもありました。
肩こりがひどく、1日中 ほとんど寝ているとのこと。1日のうち1時間 仕事でパソコンに向かうとそれだけで疲労する。
5年前に会社をやめてからは、別の会社に就職しても2、3ヶ月ほどするとやる気を失い、辞めてしまう。
2年前からは仕事についていない。家事もできない。食器を洗おうとすると落としてしまう。食欲はあるが食べたら気持ち悪くなる。
手足はパニック発作の時は冷える。吐き気がありおなががはるという訴えでした。
SSRI、SNRIを含めいろんな抗うつ剤を処方されましたが、副作用がひどく、抗うつ薬による治療ができないという状態でした。
昨年10月終わりから一ヶ月ほどかけて、9回治療したところ「5年前にひどくなる直前の状態にもどった気がする」という感想をいただくという状態となりました。その後 1月中旬まで11回ほど治療したところ、1日 8~12時間程度 パソコンに向かって仕事ができるようになりました。
すでにうつ病とは呼べない状態です。
パニック障害については、以前は電車に乗ることを考えただけで吐き気がしていたそうですが、平気で電車に乗って出かけられるようになりました。玉本さんはちょっと小太りのむくみのあるような体型だったのですが、すっきりとやせることができました。
現在は一年を通して症状のあるアレルギー性鼻炎の治療に取り組んでいます。こちらも花粉症の時期にもかかわらず、快方に向かっています。
まずは一ヶ月の治療
うつ病は個人差はありますが、大体 一ヶ月きちんと治療を受けていただければ結果を出せると考えています。
週2回一ヶ月 8回が理想的です。抗うつ剤の場合は、最初の2~3週間は副作用だけがでてくる。薬が効いてくるのに2~3週間はかかるといわれています。薬をやめていくのにも かなりの期間が必要です。
鍼灸単独でも十分 治療できます。抗うつ剤併用でも治療できます。
アルツハイマー性痴ほうが治る?実は!
3月の関西中医鍼灸研究会でアルツハイマー性の痴ほうと診断された男性老人が2週間に4回の鍼灸治療で治ったという症例が報告されました。
アルツハイマー性の痴ほうがそんな短期間に治るはずがありません。怪訝(けげん)に思っていると、報告者は苦笑いしながらこう付け加えました。
「最初のアルツハイマー性の痴ほうという診断が誤診だったんですよ。患者さんは結局 老人性うつ病だったんですよ。」と。
痴ほう症と老人性うつ病は紛らわしいものです。医師も誤診しやすいといわれています。
老人性うつ病には鍼灸はよく効きますし、抗うつ剤も効果があります。
痴ほうの評価表は万能ではない
年をとり、物忘れがひどくなりぼおっとしてくると、周りは痴ほうを疑います。けれど周囲に対して無関心になり、思考力や集中力が低下する症状は老人性うつ病でもみられるため、紛らわしいのです。
一般的に痴ほう症の診断には「改訂長谷川式」といわれる評価表が使われますが、患者さんが答えるのがおっくうなくらい疲れていたり、何でこんな若造(医師)のあほな質問に答えんといかんのかと怒りを感じたりしたら誤診を招きます。
「私がこれから言う数字を逆から言って下さい。6-8-2を逆に言ってください」とか「100引く7は」と聞かれてあなたは平静でいられますか。
老人性うつ病は鍼灸へ1ヶ月程度
評判のいい鍼灸院のところへ連れて行ってあげてください。
1ヶ月程度で症状が改善すれば、痴ほうではありません。
患者さんも楽になりますが、周囲の家族も大助かりです。
関西中医鍼灸研究会で2週間に4回の鍼灸治療で治ったと報告があったように、劇的によくなる場合もあります。抗うつ剤は、服用し始めてから効果が出るまでに2週間ぐらいかかるのが普通です。また抗うつ剤は、喉(のど)の渇き、便秘、だるさ、眠気、低血圧などの副作用があります。
周囲に対して無関心になり、ぼうっとしてきたお年寄りに、副作用を納得して飲み続けてもらうのは大変ではないでしょうか。老人は身体も薬の解毒作用も弱っているため、本来は抗うつ剤の量も少量から慎重にはじめる必要があります。
私は まずは鍼灸から始めることをお勧めします。
神経症やうつ病などを 心の風邪といういう言方があります。身体が風邪をひくように心も風邪をひく。精神症状を特別視しないでという気持ちがこめられています。 中医学は心と身体をそもそも別のものとしていません。 ヨーロッパやアメリカでは精神をキリスト教の一部の考え方の影響から、特別視していました。
これに対し、中医学(中国の伝統医学)は身体と心を一体のものとして、治療をしてきました。 関西中医鍼灸研究会で、中医学の立場から漢方薬を使って治療されている精神科医師の渡辺先生の話を聞きました。
ここでは一部を抜粋してお伝えします。
藤井
「本日の中医研講座は、大阪府吹田市のJR吹田駅前で開業されている、精神科医師である、さわらび診療所の渡辺先生に講演をお願いしました。わたしたちが日常で出会う患者さんは神経症、精神病の既往歴をもっている方々がいらっしゃいます。」
渡辺先生
「わたしがいわゆる精神科・神経科を標榜するクリニックを吹田ではじめて十年ぐらいになるのですけど、通院している患者さんで鍼灸の治療を同時にされている患者さんはたくさんいらっしゃいますし、藤井さんにもお願いしてお世話になってきたわけです。精神科神経科領域で鍼灸の治療を受けている患者さんは確かに多いです。
精神科の病気
外因―脳に影響を与えるハッキリとした原因がある。
脳器質性 ―例:脳腫瘍、脳炎、痴呆、癲癇
中毒性 ―例:アルコール中毒、覚醒剤中毒
症候性 ―例:膠原病、感染症
心因―心理的葛藤が原因
例:不安神経症、心気神経症、強迫神経症、PTSD
内因―現代医学ではまだ、原因が解明されていない
例:精神分裂病、非定型精神病、気分障害
まず精神科では外因、心因、内因という分類を昔から使っています。
外因とは脳に明らかに原因があるとわかっている病気です。脳腫瘍、脳炎、痴呆などです。または中毒性の病気です。覚醒剤中毒やアルコール中毒が中毒性の病気になります。内科疾患でも精神症状を呈する病気があります。
心因は心理的葛藤などが原因であるというものです。神経症や心気神経症、不安神経症、性格障害、PTSDなどはこの範疇に入ります。神経症は鍼灸の先生方にもよくこられるのでないかと思います。 内因はいわゆる精神病です。心因などの原因がはっきりとわからないものです。現代医学では、まだ原因がわかっていません。精神分裂病、非定形精神病などが内因の範疇に入ります。
最近は気分障害とか感情障害と呼ぶことが多いですが、いわゆる躁鬱病などもこの範疇に入ります。
心の風邪の代表的なもの パニック障害
藤井
不安神経症とほぼ同じような意味です。私も鍼灸でよく治療しています。肩がこるとかいうことで来られることがおおいのですが、診断すると大体わかるので、「胸が苦しくなったり、のどがつまってくるようなことがありませんか」とこちらから聞きだします。鍼灸も良く効きます。 心因性と一応 分類されていますが、中医学では消化器の状態、つまり胃腸の状態が大きく関係していると考えています。実際、体調が悪化した時に出てくる場合が多いようです。
一般にはストレス社会だから増えているといわれていますが、それだけでなく食べ物を含む生活様式の変化が大きく関係していると考えています。
28歳男性、パニック障害
1.経過
急に息苦しくなり呼吸が止まるのではないかと心配になり、救急車で市民病院に行く。
過換気症候群なので、ビニール袋をかぶって呼吸するようにと言われ、安定剤を一錠もらって帰った。
証券会社に営業マンとして勤めていたが、バブル崩壊で仕事がしんどくなった。毎日帰宅が遅いうえ、仕事を家に持ち帰ったり、会社がどうなるかわからないので、休日にも将来に備えて資格をとるべく勉強するなど本を読んだりして、子供の相手をする時間も無い生活が続いていた。
発作が起こり、会社にもいけなくなるのではないかという不安がつのるうちに、明け方にまた発作が起きて前回と同様に救急受診し、同様の処置で帰宅する。
発作の起こり方は、まず喉が苦しくなり、ついで胸が苦しくなり、息が吸い込みにくくなり、急速に不安が強まる。特に吸い込みにくい感じが強い。
診療所に来られて、診断書を書いて会社を一週間休むように指示する。会社を一週間休み、十分休息をとり、かなりおちついた。残業と仕事の持ち帰りをやめ、休日は運動や子供の遊び相手をするようになってから、発作はおきなくなった。薬物も臨時薬を携行して不安をコントロールできるようになり、やや薬物に対する依存ができかけたので、自律訓練法をマスターするようにして薬物からも離れることができた。
よく話を聞くと仕事のことだけでなく、離れて暮らしていた両親が年をとってきたので、近く親と同居する予定であること、さらにローンの返済について悩みがあった。仲人である会社の上司から仕事についてハッパをかけられることがあったなどの事情もかさなっていたことがわかった。
2.一般的な経過
ストレスの持続+新しいストレスの重なり→症状のでる前の心気的な状態→疲労を乗り越えてがんばる(あるいはがんばらねば成らない状況)→発症
渡辺先生
「パニック障害はたいてい持続的なストレスがあります。PTSDのように突発的なストレスではなく、持続的なストレスです。ストレスの無い方はいないわけですが、それだけならなんとか頑張れます。それにさらに別のストレスが加わるとしんどくなります。それで疲れやすい、眠りにくいというような前駆的症状がありますが、それでも頑張って乗り越えないといけないと思い、無理を重ねます。そしてある日突然、症状が出ます。」
○症状のさまざま
いきぐるしい、動悸が止まらない、冷や汗が出る、心臓がとまって死ぬのではないかと思う、気が狂ってしまうのではないかという不安。
発作が起こったらと思うと電車にのれない、買い物に行けない(広場恐怖、閉所恐怖)。
渡辺先生
「発作が起こったらと思うと電車に乗れない、途中で降りられない特急や急行に乗れない、あるいは会社にいけないという深刻な状態となります。パニック障害のかたは早めに治療を受けるとそのような不安発作を乗り越えられますが、大抵の場合、最初は内科にいかれます。内科では精神安定剤や睡眠薬を出されます。しかし、これは一時凌ぎであり、根本的克服ではありません。そうして時間がたつと慢性化する可能性があります。」
漢方の有効性―梅核気など。
渡辺先生
「わたしはこのようなパニック障害に対するファーストチョイスはほとんど漢方薬です。それはいろいろ理由があるのですが、安定剤は効きますが、副作用として眠い、だるいという症状があります。急性期にはトランキライザーですが、長期的には漢方薬で改善していきます。だから急性期にはトランキライザーと漢方薬の併用となります」
心の風邪その2 うつ病
藤井
うつ病もよくある病気です。周りの人々に理解されにくく「がんばれ」とか「しっかりしろ」とか言われて傷ついてしまうことが多い病気です。 患者さんは充分にがんばっているのです。がんばりすぎてなってしまう病気なのに、「がんばれ」といわれたらたまったものではありません。
いろんな身体症状も出るので、鍼灸院を、軽い段階で(重くなると自宅にひきこもられますので)訪れる患者さんもいらっしゃいます。鍼灸もよく効きます。症状を軽くしてなんとか日常生活を楽にすごしていけるようにしていきます。お薬との併用もなんの問題もありません。
うつ病の治療には 私は督脈通陽法という独特の治療法を用いています。
うつ病というところまでいかなくても、身体が重い、何をする気力もおきないといった状態に鍼灸治療は効きます。当たり前ですが、こういう軽い段階の方が早く治ります。
65歳男性、反応性うつ病
高血圧で治療を受けていた。その診療所からの紹介。
退職して今後の人生設計を考えていた矢先に阪神大震災に遭う。新神戸の住んでいたマンションが半壊する。再建の会議の世話人をしていた。五十世帯の大きなマンションであり、やっかいな仕事だった。五月頃から、めまい、吐き気、不眠を訴える。内科的な検査では高血圧の他には異常なし。
受診時の問診
「何のために生きているのかと思う。よき父親として、よき夫としてどうしたら全うできるのかと...」 「さいきんテレビをみる気もしない、本も読めない。集中できない」
ねつきが悪い、眠り浅い、早く目が覚める。
頭が午前中ぼんやりしている。 目がまぶしい。
(渡辺先生「目がまぶしいというのはうつ病、神経症でよくある訴えです。内科などで目がまぶしいと訴えてもほとんど取り上げられません。わたしはストレスから来る疾患での一つの特徴だと思います」)
口が乾く、小便が近い。
食欲が無い。二ヶ月で3キロ痩せた。
同伴した妻の話
性格はすごく几帳面で真面目。最近ひどく心配性になり、妻の外出も心配で「早く帰れ」と言う。待合室でもこんなところ(精神科)に来ることになって...とショックを受けている。
(渡辺先生「うつ病になる性格はまじめで几帳面な性格が多く、人から頼まれたら嫌といえないタイプです」)
経過
服薬、断りにくかった役職を断る。二ヶ月で不眠が治り、食欲も回復する。
渡辺先生
「こういう方には背負っている荷物を軽くするということでマンションの世話人という役職を降りてもらいました。」
うつ状態に一番のクスリは休息です
うつ病については「患者さんと家族、会社の上司に現在の状態を説明する。うつ状態であり、病気なので治る」と説明することが大切になります。
精神主義というか、根性で頑張れとかいうことはいまでもあります。やる気をだせば、できると激励してしまうことは多いです。そして患者自身さんも「病気なんかに逃げてはいけない」とか「たるんでいる」とか「甘えている」と考えて、「頑張ろう」と思ってしまいます。
うつ状態に一番のクスリは休息です。最近は風邪をひいてもカゼ薬を飲んで、会社にいきますね。「風邪ぐらいで休むなんて何事だ」という感じです。そうしてコジらせていって、結局は休むことになります。 そこでお墨付きとして、医者が診断書を書いて休んでもらいます。少し深い症状なら、クスリが必要です。クスリには抵抗が強いですが、副作用について説明してきちん飲んでいただくことが大事です。
藤井
「鍼灸師は現状では 精神科のお医者さまほど権威がありません。鍼灸師の診断 では会社が納得しないでしょう。診断書を書いて休んでもらうわけにはいかないので、 必要に応じて精神科を紹介するか、休養を進めつづけることになります。ただ針灸治 療によって 仕事を継続可能と判断した場合は、短期間のお休みをとることを進めるだ けの場合もあります。針灸治療がそれだけ症状を緩和できるということです。」
うつ病は三ヶ月も治療したら、ほとんどよくなります
うつ病は三ヶ月も治療したら、ほとんどよくなります。90パーセントは回復します。
しかし、それぐらい時間がかかるとも言えます。中途半端によくなったからと言って、途中で治療をやめることはいけません。うつ病のクスリというのは、回復を早めるわけではなく、症状を浅くする側面があり、途中でやめるとまた最初からという話になります。
うつ病のクスリは、傷のカサブタと同じで、完全に傷が治癒しないうちにカサブタをはがすとまた傷から出血します。
うつ病で一番心配なのは自殺です。うつの極期では、自殺念慮はあっても自殺するだけのエネルギーはありません。うつ病では回復期が一番あぶないです。だから、きちんとした手当てが必要です。
うつ病の期間中は重大な決断はぜったいにしないことです
うつ病の間には「会社をやめる」とか「離婚する」と言い出します。
しかし、これは後悔します。うつ病の期間中は重大な決断はぜったいにしないことです。うつ病が治ってからなら、「こんなツラい会社は辞める」というなら良いですが、うつ病の間は問題を先延ばしにして結論をださないことです。