症状と治療のお話し : 口、顎関節症

顎関節症と耳管開放症 肩こりの20代女性

顎関節症 耳管開放症になった20代女性のお話です。
音大声楽科の学生さんです。約1年前から、左耳の耳鳴りが始まりました。一か月後に右の顎が痛み始め、その一か月後に左耳が開き始めました。歌っている最中や緊張すると耳が開きます。問診カードには、耳管開放症 耳鳴り 顎関節症と書かれていました。
首や肩が凝りやすく、食事は量を食べられません。何かあると胃が痛くなります。手足も冷えます。
少し消化器系が弱くて、やや緊張しやすい方です。交感神経優位のタイプです。消化器系の弱い状態を中医学では脾気虚(ひききょ)、緊張しやすく手足が冷え、首や肩が凝りやすい状態を肝欝気滞(かんうつきたい)と呼びます。両者が合わさった状態を、肝脾不和(かんひふわ)と言います。
肝欝気滞(かんうつきたい)は気を巡らせ、脾気虚(ひききょ)は消化器系を元気にして治していきます。耳管開放症 耳鳴り 顎関節症は気虚と気滞、気が滞っている状態の合わさったもので、別の病名ですが、身体の状態=証(しょう)からみると同じものです。
患者さんはいろいろな症状が出てきて、混乱されていますが、中医学からみるとひとつの証(しょう)がいろいろな症状をもたらしているだけでそう難しい病気ではありません。約2カ月8回の治療で治しました。
 
発表会のために新曲に挑戦した時のエピソードは興味深いものでした。最初の1週間は耳が開くことが多かったのですが、次の1週間は全然 耳が開くことはなく肩こりも顎の痛みもなく発表会を迎えられたといいます。
新曲に慣れない時は、緊張して気が滞ったのです。習熟して気持ちよく歌えるようになってからは気が巡り諸症状は消えたのです。2022年7月掲載
 
◆コメントをいただきました。
耳が開くことがほとんどなくなり より練習に集中できるようになりました。治療を重ねるごとに、少しずつ良くなっていくのを実感することができました。ありがとうございました。
自筆のコメントは以下からどうぞ
 

耳のつまりとドライマウスがいっしょに治った話 シェーグレン症候群に効く鍼灸

杉沢(仮名)さんは50代の女性です。フルタイムで働かれています。1年前から右耳が詰まった感じが続いていると来院されました。耳鼻科の薬は飲んでいるが、症状が改善しないそうです。
肩こりもひどく、右ひじや右ひざも痛みます。杉沢さんはシェーグレン症候群のため6年前から舌も痛く、口も渇きます。味もちゃんと感じることができません。

治療開始して3ヶ月で耳が治ったのでアンケートをいただきました。右ひじや右ひざも治り、肩こりも以前ほどではなくなりました。
舌の痛みもなくなり、口の渇き等のドライマウスも楽になったので、喜んでいただけました。食べ物もおいしく感じるようになったとのことです。シェーグレン症候群が鍼灸でよくなるとは期待されていなかったようです。

残念ながらシェーグレン症候群は良くはなってもなかなか完治とはいきません。肩こりの治療も兼ねて、時々通院されています。

※シェーグレン症候群とは、自己免疫疾患の一種です。涙腺の涙分泌や唾液腺の唾液分泌がうまくいかなくなる病気です。40~60歳の中年女性に好発し、男女比は1対14といわれています。

◆アンケートでは「非常によい効果があった。ほとんど完全になおり苦痛がない。」「治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は【1】である」との評価をいただき以下のコメントをいただきました。

◆コメント
初めてうかがったときは右耳がほとんどつまったような感じで聞き取りにくく困っていたが今はほぼ完治した。時々以前のようなつまり感を感じる事はあるがすぐに戻るので問題ありません。
お医者さんの薬だけで半年以上かかってもなかなか改善しなかったのが2.3ヶ月の治療をしていただいて改善したのでもっと早く通院させていただければよかったと思っております。ありがとうございました。

◆自筆アンケートは以下から
http://yuisuita.sblo.jp/article/129235084.html
※治療効果には個人差があります。みなさんが同じように治るわけではありません。
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。

数ヵ月後も元気でした!PMSで全般性不安障害(GAD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)が疑われた患者さんのその後

「全般性不安障害(GAD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)が疑われた患者さんの治療 PMSも」の吉本(仮名)さんの数ヵ月後の様子を知るためにアンケート出していたのが返ってきました。

☆数ヵ月後も元気でした!PMSで全般性不安障害(GAD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)が疑われた患者さんのその後

結(ゆい)を卒業された後も、吉本さんは順調です。
吉本さんは、右下の歯茎に麻酔したところ、翌日朝から右側に違和感が出現、右半身全体に違和感がでるようになったとのことで来院されました。不安感がつよく、理由のない不安感におそわれた時は過去の怖いこともいっしょに思い出すそうです。胸がしめつけられるようになることもよくあります。しゃべりながら涙を流し話がよくとんでいましたが、2ヶ月弱の治療で卒業されました。
/acupuncture/depression/


◆鍼灸治療の効果を
よい効果があった。少し苦痛はあるがずいぶん楽になった。と回答され「治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は1である。」と回答されています。


◆コメント欄には以下のように書かれていました。

先生へ お手紙ありがとうございます。中略 先生の所に初めて行った時のような、どうしようも手に負えない不安感はなくなりました。ありがとうございます。治療中の先生の言葉にも何度もはげまされたり、心のモヤモヤ感がなくなりました。今は漢方やセルフケアで保てています。心というのは、ゆれうごくものなんですね。コメント以上

当時、仕事でスピーチする機会があるというのでスピーチの練習の仕方を教えたことを思い出しました。まあ私の失敗談中心のバカ話だったのですが。若い方が自信を回復していく姿をみるのは嬉しいものです。

10年以上続いている顎関節症が治りました。耳管開放症もだいたい治りました。 (患者さんの声)

10年以上続いている顎関節症が治りました。耳管開放症もだいたい治りました。

30代半ばのフルタイムで働いている女性です。毎晩22時くらいまで会社にいるとのこと。20代初めから左のあごがカクカクとなるようになり、続いています。左側の肩こりがひどく、左側の目の奥が時々痛みます。疲れたときに左耳で自分の声がひびくようになりました。ごおっという音がしたり、耳がつまったりします。
3回ほど治療すると、あごのカクカクする感覚がなくなり、耳もよくなりました。もちろん肩こりもありません。
一ヶ月ほどして再度、来院。「あごは大丈夫だが、疲れてくると耳にまくがはったようになり呼吸音が聞こえてくる」という症状。数回治療して耳も楽になり、その後もひどくなることはないようです。

10年以上続いていたあごの症状は3回ほどで消えたことになります。東洋医学からみるとカクカクする感覚は気滞、気のとどこおりです。気がうまく回る身体の状態をつくってあげれば再発しにくいのです。もちろんあごの周囲だけに鍼をして治したわけではありません。あごの周囲を指圧したりすると一瞬はよくなるけれど、すぐに症状がもどるのは気がうまく回る身体の状態にしていないからです。

よく患者さんに「どこを押せば治りますか」と聞かれて困ることがあります。専門家は季節や天候を考えながら、鍼をしていきます。どこから鍼をしてどこで終わるかということも大切です。患者さんのその日の体調も観察して加減しています。 世の中、単純さ、わかりやすさがもてはやされていますが東洋医学の治療はそんなものではありません。

アンケートでは
「よい効果があった。少し苦痛はあるがずいぶん楽になった」とされ「治療前の苦痛を10とすれば今は2」と回答をいただきました。

ドライマウスって、何のこと?

口から身体をみる 身体から口をみる

私は身体全体の様子をみながら、口の様子もみる。「最近 首が凝ってしょうがないんですよ。目も疲れやすいです」と患者さん。「眼の奥の方が痛くなることは ありませんか、頭痛はどうですか、なんとか眠れても朝早くに目がさめることはありませんか」と問診する。ついでに「口は渇きませんか、口は苦く感じませんか」と問いかけると、口は渇くし苦味もあるという患者さんもいるし、口が渇くだけだという人もいる。

「寝つきが悪いしなんだか腰もだるい」「膝も違和感がある、力がはいりにくい」という患者さんに「口は渇きませんか、口がしょっばく感じませんか」と聞くと、口は渇くし、しょっぱく感じるという患者さんもあるし、口が渇くだけだという人もいる。

結 (ゆい)針灸整骨院の日常的な問診風景だ。じつは前者は伝統的中国医学でいうと肝鬱気滞(かんうつきたい)、後者は腎陰虚(じんいんきょ)という身体の病 的状態で治療法も違う。針灸で身体全体を調整し、治していく。伝統医学はこんなふうに身体を全体的にみるのだが、もろもろの症状の中から、「口が渇く」と いう部分だけを取り出すと現代医学ではドライマウスということになるらしい。

ドライマウスとは

NTT東日本関東病院 歯科口腔外科 志村医師によると、「ドライマウス(口腔乾燥症)とは、唾液の分泌量が減少することにより、口の中が乾く状態。症状は、 口の中が乾燥する、口の中がネバネバする、舌や唇、口の中がやけどをしたようにヒリヒリ痛む、味覚異常など。その結果、食べ物が飲み込みづらい、しゃべり づらい、常に水分を補給しているなどの状態となり、原因は、加齢(老人性萎縮)、薬の副作用(向精神薬など)、ストレスなど心因的なもの、糖尿病・甲状腺 機能亢進症などの代謝異常、感染症、ガンの治療で唾液腺に放射線治療を受けた場合が挙げられます。また、自己免疫疾患であるシェーグレン症候群が考えられ ます。」となっている。治療法としては「うがい薬、軟膏、人工唾液などの投与や、耳下腺マッサージなどがあります。」となる。

伝統医学ではどんなふうに治るの?

20歳代から50歳代の場合は、ストレスから自律神経のバランスが崩れ、唾液の分泌量が減少している場合が多いようだ。現代医学の対症療法だけでなく、針灸や 漢方薬などの伝統医学の治療を根本から治す治療法として取り入れたほうが絶対にいい(針灸だけで、じゅうぶん治す自信がある)完治も見込める。だいたい 「口が渇く」という患者さんには、たいてい眼が乾いたり、首が凝ったり、頭痛がしたり、眠れなかったりと、いろんな症状があるのだ。
口の中が人工唾液で 潤ったとしても、これらの症状が楽になるわけではない。「乾燥がひどくなると、乾きで夜眠ることすらできなくなるといいます。」という一文がドライマウス 研究会という歯医者さんがやっているHPに紹介されていたけれど、ちょっと一面的だ。最初に紹介した肝鬱気滞(かんうつきたい)でも腎陰虚(じんいんきょ)でも口は渇くし夜眠れない。身体が全体的に病んでいる状態を改善しないと不眠は治りにくいのではと思う。口から身体をみるだけではおのずから限界はある。

40歳から60歳代の女性の場合は、非常にまれにだが、シェーグレン症候群という免疫異常の場合も考えられる。免疫異常の代表格 リウマチは関節を体外からの 異物と間違えて攻撃してしまい、関節が痛んだり、変形していく。シェーグレン症候群は唾液や涙をだす場所を攻撃してしまうのだ。伝統医学もとても有効だが、自律神経のバランスが崩れているだけの場合よりは、やっかいだ。

冷静に考えようよ

ドライマウスという言葉がしばらくマスコミをにぎわせることになるだろう。歯医者さんたちが中心となってドライマウス研究会が10月から活動を開始する。歯磨きの会社やガムの会社、製薬会社が協賛企業としていっぱいついているから、今がキャンペーン中といったところだろう。口の中を湿らせる関連商品も出てく るだろう。口の中の乾燥を訴える人が、情報を得て楽になるのはいいことだ。

ただ「人類は潤いを失ったのか!最近ペットボトルを持ち歩く人をよく見かけませんか?清涼飲料水の容器が10年前とくらべて大きくなっているのに気付いていますか?」というドライマウス研究会のコピーは人をドキッとさせる。キャッチコピーとしてはいいけれど、ちょっとつっこみたくなる。

人はのどが渇けば水を飲む。暖房や冷房の完備した場所は乾燥しやすくのどが渇きやすい。都市では昔に比べ、暖房や冷房の完備した場所が大幅に増えている。乾燥した場所では唾液の分泌量が減っていない人でもペットボトルを持ち歩きたくなる。そういう環境なのだ。乾燥している北京(ペキン)ではみんな大きなお茶瓶や魔法瓶を近くに置いている。ペットボトルを持ち歩くあなたが=ドライマウスというわけではないのだ。マスコミに踊らされず、身体の声を素直に聞こう。

顎(がく)関節症を考える

目に見える原因を求めすぎていませんか。顎関節症(がくかんせつしょう)を考える。

口を開けると痛い 、口を開けると関節で音がする(カックン、コツコツ、プチプチ、ジャリジャリ)口が開かないという読者の方はいらっしゃいますか。歯医者さんに行くと、顎関節症(がくかんせつしょう)と診断される可能性があります。

顔には顎関節(がくかんせつ)という関節があります。この関節の異常から口を開けると痛い、口が開かないといった状態がおこっているのではないか。この異常は噛み合わせがわるいことからきているのではないかと説明されることが多いのですが、私はちょっとおかしいと思っています。

実際には噛み合わせが悪いと必然的に顎関節症がおこってくるわけではないからです。噛み合わせが悪いのが直接原因か単なる誘因の一つかという点については歯医者の間でも意見が割れています。 原因がはっきりしていないので治療法も様々な方法が乱立。歯科医師によりかなり治療方法が異なっているという状況らしいのです。

顎関節は伝統的中国医学の気の流れる経路、経絡という考え方からするとおもには少陽経と呼ばれる気の流れる経路に位置しています。 鍼灸で実際に治療している立場からすると まず 少陽経の経路のどこかに気の乱れが生じ、口を開けると痛い、開かないという症状が出てきてしまう。と考えたほうがいいのではないか思っています。

顎関節症からくるとされるさまざまな全身症状があります。頭痛 肩こり 目の痛み 耳鳴り さまざまな自立神経失調症状等々。これは少陽経の流れが乱れておこる症状と重なる部分が多いのです。

目に見えるはっきりした原因を求めたところから歯医者さんたちの混乱が始まったのです。人の身体を機械のように、部品の集合のように考えてしまう一部の歯医者さんたちがいたのでしょう。口を開けると痛いというならば 何か目に見える変化、原因がないと説明がつかない。そして顎の付近のトラブルを訴える患者さんの一部の顎関節に目に見える変化、炎症をみつけ「これが原因だ!」と決め付けてしまったのではないでしょうか。

少陽経の流れが乱れておこるさまざまな症状のひとつに口を開けると痛い、開かないというのがあり、場合によっては関節部分の異常も生じている、と伝統的中国医学の立場から考えてみたらどうでしょう。目に見えるひとつの関節にとらわれず、目に見えない気の流れを仮説として考えたほうがすっきりします。

現代科学でも 実証できないけれどすぐれた学説というのはあるのですから、目に見えないものは信じないと頑なになることはないのです。

少陽経は 頭と体の側面を流れています。少陽経の流れが乱れると、頭と体の側面でいろんな症状がおこってきます。

顎関節症の口付近以外の訴えで 一番多いのは頭痛と肩こり。少陽経の流れが乱れておきる一般的な症状と一致しています。

私のところでも 顎関節のトラブルを診ることは結構あるし、治しています。開かない口も開くようになる。開けられなかった口が開くようになった、これで虫歯の治療に行けると喜ばれたこともあります。顎関節がおかしいといって来る人はまずいませんが、首がこる 肩が痛い 頭痛がするとかいって来院される患者さんの何割かに顎関節のトラブルがあります。少陽経の流れの乱れを調整する中で、肩も首も顎もいっしょに治っていくのです。じつは春に少陽経の流れの異常はおきやすい。だから今ごろ顎に違和感を覚えたりしている人は読者の中にもいらっしゃるでしょう。

なんでもかんでも顎関節が悪い、顎関節と噛み合わせにすべての原因があると決め付けて 安易に噛み合わせをいじりはじめるのは ちょっと危険な気がします。