島田(仮名)さんは30代初めの青年です。数年前は全般性不安障害、パニック障害と診断され当院に治療に来られていました。当時の鍼灸治療の一番の目的は不安で乗れない新幹線に乗れるようになることで、それはうまくいき治療は終了しました。
今回は4ヶ月前から夜、眠れず、昼間 起きていられないという症状がひどくなったと来院されました。睡眠導入剤も効きません。昼間起きているよう努力はするのですが、たまらず寝ることもよくあるようです。こま切れの質の悪い睡眠の典型です。
2ヶ月前からは身体中に湿疹が出るようになり、夜はかゆみがひどくなりよけいに眠れない。概日リズム睡眠障害、睡眠相後退症候群(DSPS)ともみえるような症状ですが、この場合は気分障害からくるものなのでしょう。島田さんは今回は気分障害と診断されているようです。気分障害とはうつ病や双極性障害を含む広い概念です。
数年前のような不安感はなくなったとのことですが、抗うつ剤は飲み続けていて、疲れやすさ、手足のしびれ感の訴えもあります。
1ヶ月に5回治療したところ、夜はすぐに眠れるようになり、昼は起きていられるようになりました。2回ほど治療したところでかゆみが引き始め、3週間後には湿疹はきれいに消えました。眠れなくなると、だんだんと身体を落ち着かせる陰(いん)という成分が減少し、皮膚のかゆみになり、やがて湿疹になることがあります。こういう時、伝統的中医学では睡眠と湿疹を一連のものと考えて治療します。みなさんも睡眠時間が極端に少なかった時、妙に興奮した経験はありませんか。身体を落ち着かせる陰(いん)が減っているからです。
◆アンケートでは「非常によい効果があった、ほとんど完全になおり苦痛がない」を選択。以下のようなコメントをいただきました。
当初の気分障害での体のだるさ、日中起きていられない、夜の睡眠障害、体全体の湿疹に悩まされてきました。2回ほどの治療で夜もぐっすり寝つけるようになり、4ヶ月間毎日飲んでいた睡眠導入剤も全くいらなくなりました。それに伴って約一週間ほどで湿疹もほとんどひいていきました。同じく体のだるさも、一週間ほどでかなりなくなり、昼からも動けるようになりました。コメント以上
浅川(仮名)さんは40代初めの女性です。1日中、パソコンの前でデスクワークされています。肩がこって、そのうち頭まで痛くなる。頭が重いくてつらい。目が重く、目の奥も痛い。眠りが浅く、時々目が覚めてしまう。便秘もひどく3~7日に一度の割合でしか便通がないといった症状です。VDT症候群と診断されそうな症状です。
結(ゆい)でよく治療している肝欝気滞(かんうつきたい)タイプの患者さんです。
1回治療しただけで「治療前の苦痛を10とすれば今は2」2回目で「治療前の苦痛を10とすれば今は1」といった状態になりました。
週に1回で1ヶ月治療したら頭痛もおこらず、肩こりもあまり意識しなくなりました。便通も1~2日に1回となり便秘も治りました。
◆初回の治療後のアンケート
治療前の苦痛を10とすれば今は2
以前、大阪駅にある鍼灸に針とお灸に計12回程度通っていたのですが、その時は何となく良いのかな?とおもう程度だったのですが、ここは、とてもしっかりと針とお灸をしてくれ、初回の翌日は体がだるかったのですが、それ以降はとても体が楽でひどかった頭痛や目の奥、首、肩の調子が良いので、これからも通おうと思います。便秘の改善と女性ホルモンの改善希望。
◆2回の治療後のアンケート
治療前の苦痛を10とすれば今は1
頭痛、肩こり、目の痛みなどは2回目で苦痛を感じる痛みはおこらなくなりました。便秘は以前は3~7日に一度の割合だったのが今は2.5日に一度
2回の治療でよくなりました。頭痛、肩こり、目、首の痛み、イライラが今後もおこらない様にしたい。
自筆のアンケートは1回目と2回目のアンケートをいっしょに写しています。
まだ風邪やインフルエンザが流行っているようです。今回は風邪の発熱の後にひどく背中が痛んだ患者さんが治ったお話です。2014年4月17日掲載。
☆風邪の後の背中の痛みが1週間で消えました
村田さん(仮名)は40代後半の女性です。一週間前に風邪をひいて発熱、背中が痛くなりました。発熱はしばらくしておさまったものの背中の痛みはとれません。仰向けに寝て背中を圧迫すると痛いとのこと。横向けになってもらい、側臥位で治療しました。1日おきに2回治療したところ当初の痛みを10とすると3~4という状態に落ち着きました。その後もう一度治療すると10とすると0.5というところまで激減、治療開始から1週間がたっていました。4回で背中の痛みはなくなり治療を終了しました。この段階でアンケートをいただきました。
村田さんは持病の喘息もありその後も時々、治療を続けています。背中の痛みの治療中も息苦しさもありそちらもいっしょに治療していました。鍼灸は慢性的なものだけでなく急性の症状にも良く効きます。風邪の後に咳が続くような時もよくききます。
杉山(仮名)さんは40代の女性です。当初は耳管開放症で来院されました。これは一ヶ月ほどで治りました。
1年中、鼻の調子がわるく通年性のアレルギー性鼻炎とも診断されていました。とくにスギやヒノキの花粉の飛ぶ時期はひどい。これも治療して軽くなりました。よく背中がこったり、食べ過ぎるとおなかがはったりするのもなくなりました。
そうこうしているうちに顔の赤みやお化粧がすぐ取れてしまう、メイクが浮いてしまうということが治りました。杉山さんはこれらの症状改善に以下のように回答されています。
◎非常によい効果があった、ほとんど完全に治り苦痛がない。
◎治療前の苦痛を10とすれば今は1である。
◆杉山さんのアンケートの回答
昨年、耳管開放症で来院し、症状は回復しました。その後年中ある花粉症、冷え症、体調管理のため通院中、当たり前すぎてあきらめきっていたというより、そんなもんだと思っていた顔の赤み、お化粧がすぐ取れてしまう、メイクが浮いてしまうということが徐々に軽減し、今では朝お化粧して、夜まで全く直す必要がなくなりました。ベストな顔でいられるのは自信にもつながるような気がします。またほてりが気にならなくなったとともにお肌のしっとり感もましました。若々しさが戻った気分です。ありがとうございます。これからもよろしくお願い致します。
回答以上。
杉山さんの状態は伝統的中医学では上実下虚(じょうじつかきょ)といいます。頭の方で気が滞り、うまく下へ降りてこない状態です。だから顔がほてり足が冷えていたのです。アレルギー性鼻炎を治療する過程で上実下虚を治しました。顔の虚熱(きょねつ)というバランスの乱れからくる熱がとれたために顔の赤みがなくなり、お化粧もとれなくなりました。足の冷えもなくなりました。治療の中で普通にやっていることなのですが、女性にはメイクを直さなくてよくなったと喜ばれています。
五十嵐(仮名)さんは十代後半の学生さん、中学2年の頃から生理が始まったのですが、1年に1~2回しかきません。3ヶ月治療したところ定期的に生理がくるようになりました。
アトピー性皮膚炎も小学校高学年からあり、頚や肩もこり、足がつりやすいそうです。こちらの方も肌がきれいになり、かゆみもなくなりました。「頚、肩のこり」が最初になくなり、次に足がつらなくなり、アトピー性皮膚炎がきれいになった後に生理がくるようになりました。五十嵐さんは中医学でいうと血虚(けっきょ)のタイプ、少しだけ気虚(ききょ)もありました。
中医学では「頚、肩のこり」「足がつる」「アトピー性皮膚炎」「無月経」を別の病気とは考えません。「頚、肩のこり」は気虚(ききょ)のために気のめぐりが悪くなったために起こっています。
足がつるのは筋肉にうまく気血(きけつ)が回っていないため、アトピー性皮膚炎は血虚のため皮膚の状態が悪くなったためです。血虚の肌はアトピーとは限りませんが、カサカサしてかゆみが出やすくなります。
無月経は血虚で栄養状態が悪くなっているためです。無月経という病気を治すというよりは、身体を元気にしていく中で自然と回復していくイメージです。
アンケートには「生理が毎月来るようになってとてもうれしいです。」と書かれていました。無月経の治療はホルモン療法、低用量ピルだけではないのです。鍼灸は本当に身体を治していきます。
※五十嵐さんの場合は血虚でしたが、無月経の原因は血虚ばかりではありません。
中医学では頭がふらふらし気が小さく驚きやすく不眠となり、ため息ばかり出るような状態、物事についてさんざん考え思いをめぐらしても決断のつかない状態や不安にさいなまれる状態を胆虚(たんきょ)と診断し治療しています。
吉本(仮名)さんは20代の女性です。4ヶ月前、右下の歯茎に麻酔したところ、翌日朝から右側に違和感が出現、右半身全体に違和感がでるようになったとのことで来院されました。漢方薬は処方されていましたが、なかなか効かないそうです。不安感がつよく、理由のない不安感におそわれた時は過去の怖いこともいっしょに思い出すそうです。胸がしめつけられるようになることもよくあります。しゃべりながら涙を流し話がよくとびます。
3週間6回ほど治療したところ、不安感は消え情緒も落ち着きました。仕事にも集中できるようになりました。この段階でアンケートをいただきました。
◆アンケート回答
よい効果があった。少し苦痛はあるがずいぶん楽になった。治療前の苦痛を10とすれば今は3である。
◆コメント
右半身の硬さは少し残りますが、何もないことに涙がでたり、怖いことを思い出すのが減り、情緒が安定してきてうれしいです。情緒が不安定なのは自分の努力や考え方の問題のように思っていましたが、間違ってカイロがつながってしまった状態と言われ初めての治療の次の日、意味のわからない不安や右のモヤモヤがとれておどろきました。ありがとうございます。
※「間違ってカイロがつながってしまった状態」というのは「不安でもないことに不安を感じてしまうのは、脳の中である刺激、情報がまちがって伝わってしまう状態になっています。いわばバグです。鍼灸は脳のバグを修正できます」と説明したことをさしています(藤井)
その後、1ヶ月治療して右半身の違和感もなくなり仕事にも集中できるようになり、不安感も全然 感じなくなり卒業していかれました。もともと月経前症候群(PMS)のある方でしたが、こちらの症状もでなくなっていました。
吉本(仮名)さんは幼い頃から集中できず、考えがコロコロ変わる状態だったそうで、注意欠陥多動性障害(ADHD)を疑われたといいます。
今回は全般性不安障害(GAD)のような状態でした。これは胆虚(たんきょ)です。
何事にも自信のもてない方でしたが、仕事のやり方を少し助言したところ、助言どおり素直にやってくださり仕事がうまくいきました。「うまくいきました!」と嬉しそうに報告してくださいました。いっぱいいっぱいほめました。
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。
亀井(仮名)さんは60代後半の女性、8ヶ月前に帯状疱疹にかかりました。帯状疱疹は治ったのですが、その後右の背中から胸にかけて「はりついたような痛み」に悩まされることになります。
帯状疱疹後神経痛です。 帯状疱疹になる前から頑固な便秘に苦しんでいらっしゃいました。
1ヶ月ほど前から耳鳴りも出ていました。約2ヶ月の間に13回治療して、全部きれいに治りました。
5~6回目で食事がおいしくなり、便秘がなおり、耳鳴りが消えました。帯状疱疹後神経痛も消えました。
ところが帯状疱疹後神経痛はいったんよくなったものの2~3回 再発を繰り返しました。
落胆する亀井さんの生活の様子を聞き取ると理由がわかりました。
帯状疱疹後神経痛は鍼灸治療を開始するまで、ずっと続く痛みでした。ところがいったんよくなった後の痛みは、2日ほどすると自然に消えているのです。
治療して元気になった亀井さんは趣味の刺繍を再会、家の片付けや掃除を猛然と始めていたのです。
しかもいったん区切りがつくまでは仕事をやめない猛烈ぶり。それは朝から深夜に及んでいました。
「背中の痛みは筋肉痛ですよ。8ヶ月ろくに動いていなかったら、筋肉も落ちています。もう少しスローに動いてください。あなたは仕事中は疲労感を感じないでしょう。終わったとたんに吸い込まれるような疲労感に襲われませんか。」と聞くとその通りだというお答え。
帯状疱疹後神経痛が治ったあとに筋肉痛がおこっていたのです。
集中力の強さがあだになっていました。
亀井さんは2つの痛みを混同して悲嘆にくれていたのです。
「動きすぎると筋肉痛になります、適度に動いていると以前のように筋肉もついてきますから痛まなくなります。無理をしないでください。」とお願いしました。
筋肉痛と思い始めると同じ痛みでもたいしたことではないと感じるようになりました。痛みは記憶の面があります。過去の帯状疱疹後神経痛のひどい痛みと結びつけ、耐えがたい痛みとなって再発していたのです。
数ヶ月飲み続けていたリリカは鍼灸をはじめる時点でやめられていました。リリカは抗痙攣剤でありながら痛み止めとして使われているお薬です。
「やると決めたことは何があってもやる」と無理をされる方に慢性的な痛みが続く場合が多いようです。
60代は30代とは違います。明日やれることは明日に回す寛容さが身体を楽にします。
篠原(仮名)さんは10代前半の女の子です。
身体のあちこちが痛いと訴えて来院されました。
某大学病院に通院していてそこでは「線維筋痛症かもしれない」といわれています。
線維筋痛症は日本線維筋痛症学会によると「原因不明の全身の疼痛、不眠、うつ病のなどの精神神経症状、過敏性大腸炎、膀胱炎などの症状を主症状とする病気」とされています。
マスコミでは「線維筋痛症の患者さんが、いろいろ医者をあたってみたが、どこでもうまくいかず線維筋痛症の専門医に行ってやっと救われた。」というたぐいの物語が流されることがありますが、あれは半分はウソです。
たしかに患者さんの症状は改善したかもしれませんが、線維筋痛症の専門医といっても特別な治療法があるわけではありません。
お医者さんごとに工夫しながらやっているというのが実態です。
針灸は線維筋痛症によく効きます。
線維筋痛症診療ガイドラインでもエビデンスⅡa 推奨度B(推奨度Aの治療法はないのです)と最高位になっています。
篠原(仮名)さんは9月から治療開始、第1回目の治療のあとはすぐに眠くなり、いつもより長く眠りました。
そして大量の排便。病的な緊張状態がほぐれ身体の内部が動きだしました。
3回ほど治療すると膝以外の関節の痛みはほぼなくなってきました。
2ヶ月で痛みはなくなり、お母さんからアンケートの回答をいただきました。
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。
帯状疱疹は子供の頃にかかった水痘(すいとう)、水疱瘡(みずぼうそう)のウィルスが何十年も神経細胞のなかで眠っていた後に突然暴れだして起こる病気で、子供の頃に水痘になった事がある人はみんな身体の中にこのウィルスをもっています。
免疫力が弱った時にかかるといわれています。
帯状疱疹は非常に痛い病気ですが、皮膚の発疹が治る頃には痛みもなくなるといわれています。
しかし痛みだけが後遺症として残ることがあり、これが帯状疱疹後神経痛と呼ばれています。
高齢者では、帯状疱疹の治癒後にいたみが残ることが多く、帯状疱疹後、長期にわたって痛みを訴える患者の70%は60歳以上といわれています。
非常に治りにくいといわれていますが、針灸はよく効きます。
私の治療のやり方は専門誌 鍼灸ジャーナル Vol.24(2012年1月号)掲載の「帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛の治療」に書いています。
品川(仮名)さんは80代のお年寄り、娘さんに付き添われて来院されました。3ヶ月にわたって痛み続けています。
「ぎゅうっといつも痛い」という大変お気の毒な状況。
痛み止めは全然効きません。リリカという薬を処方されるとフラついて歩けなくなり中止しました。
リリカ(薬名プレガバリン)は抗痙攣剤で、帯状疱疹後神経痛によく使われています。
抗痙攣剤のため、効き過ぎれば脳の働きを抑えて、意識レベルの低下やめまい、ふらつきなどの症状をおこします。
結局、約一ヶ月に10回の針灸治療をして痛みはきれいになくなりました。
娘さんからは「2~3回目の受診から本人も自覚できるくらい痛みが少なくなり、2ヶ月、週2回ぐらいでほぼなくなりました。」とのコメントをいただきました
(治療期間は実際は1ヶ月と数日なのですが、2ヶ月にわたったためそう記載されています)