亀井(仮名)さんは60代後半の女性、8ヶ月前に帯状疱疹にかかりました。帯状疱疹は治ったのですが、その後右の背中から胸にかけて「はりついたような痛み」に悩まされることになります。
帯状疱疹後神経痛です。 帯状疱疹になる前から頑固な便秘に苦しんでいらっしゃいました。
1ヶ月ほど前から耳鳴りも出ていました。約2ヶ月の間に13回治療して、全部きれいに治りました。
5~6回目で食事がおいしくなり、便秘がなおり、耳鳴りが消えました。帯状疱疹後神経痛も消えました。
ところが帯状疱疹後神経痛はいったんよくなったものの2~3回 再発を繰り返しました。
落胆する亀井さんの生活の様子を聞き取ると理由がわかりました。
帯状疱疹後神経痛は鍼灸治療を開始するまで、ずっと続く痛みでした。ところがいったんよくなった後の痛みは、2日ほどすると自然に消えているのです。
治療して元気になった亀井さんは趣味の刺繍を再会、家の片付けや掃除を猛然と始めていたのです。
しかもいったん区切りがつくまでは仕事をやめない猛烈ぶり。それは朝から深夜に及んでいました。
「背中の痛みは筋肉痛ですよ。8ヶ月ろくに動いていなかったら、筋肉も落ちています。もう少しスローに動いてください。あなたは仕事中は疲労感を感じないでしょう。終わったとたんに吸い込まれるような疲労感に襲われませんか。」と聞くとその通りだというお答え。
帯状疱疹後神経痛が治ったあとに筋肉痛がおこっていたのです。
集中力の強さがあだになっていました。
亀井さんは2つの痛みを混同して悲嘆にくれていたのです。
「動きすぎると筋肉痛になります、適度に動いていると以前のように筋肉もついてきますから痛まなくなります。無理をしないでください。」とお願いしました。
筋肉痛と思い始めると同じ痛みでもたいしたことではないと感じるようになりました。痛みは記憶の面があります。過去の帯状疱疹後神経痛のひどい痛みと結びつけ、耐えがたい痛みとなって再発していたのです。
数ヶ月飲み続けていたリリカは鍼灸をはじめる時点でやめられていました。リリカは抗痙攣剤でありながら痛み止めとして使われているお薬です。
「やると決めたことは何があってもやる」と無理をされる方に慢性的な痛みが続く場合が多いようです。
60代は30代とは違います。明日やれることは明日に回す寛容さが身体を楽にします。
篠原(仮名)さんは10代前半の女の子です。
身体のあちこちが痛いと訴えて来院されました。
某大学病院に通院していてそこでは「線維筋痛症かもしれない」といわれています。
線維筋痛症は日本線維筋痛症学会によると「原因不明の全身の疼痛、不眠、うつ病のなどの精神神経症状、過敏性大腸炎、膀胱炎などの症状を主症状とする病気」とされています。
マスコミでは「線維筋痛症の患者さんが、いろいろ医者をあたってみたが、どこでもうまくいかず線維筋痛症の専門医に行ってやっと救われた。」というたぐいの物語が流されることがありますが、あれは半分はウソです。
たしかに患者さんの症状は改善したかもしれませんが、線維筋痛症の専門医といっても特別な治療法があるわけではありません。
お医者さんごとに工夫しながらやっているというのが実態です。
針灸は線維筋痛症によく効きます。
線維筋痛症診療ガイドラインでもエビデンスⅡa 推奨度B(推奨度Aの治療法はないのです)と最高位になっています。
篠原(仮名)さんは9月から治療開始、第1回目の治療のあとはすぐに眠くなり、いつもより長く眠りました。
そして大量の排便。病的な緊張状態がほぐれ身体の内部が動きだしました。
3回ほど治療すると膝以外の関節の痛みはほぼなくなってきました。
2ヶ月で痛みはなくなり、お母さんからアンケートの回答をいただきました。
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。
帯状疱疹は子供の頃にかかった水痘(すいとう)、水疱瘡(みずぼうそう)のウィルスが何十年も神経細胞のなかで眠っていた後に突然暴れだして起こる病気で、子供の頃に水痘になった事がある人はみんな身体の中にこのウィルスをもっています。
免疫力が弱った時にかかるといわれています。
帯状疱疹は非常に痛い病気ですが、皮膚の発疹が治る頃には痛みもなくなるといわれています。
しかし痛みだけが後遺症として残ることがあり、これが帯状疱疹後神経痛と呼ばれています。
高齢者では、帯状疱疹の治癒後にいたみが残ることが多く、帯状疱疹後、長期にわたって痛みを訴える患者の70%は60歳以上といわれています。
非常に治りにくいといわれていますが、針灸はよく効きます。
私の治療のやり方は専門誌 鍼灸ジャーナル Vol.24(2012年1月号)掲載の「帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛の治療」に書いています。
品川(仮名)さんは80代のお年寄り、娘さんに付き添われて来院されました。3ヶ月にわたって痛み続けています。
「ぎゅうっといつも痛い」という大変お気の毒な状況。
痛み止めは全然効きません。リリカという薬を処方されるとフラついて歩けなくなり中止しました。
リリカ(薬名プレガバリン)は抗痙攣剤で、帯状疱疹後神経痛によく使われています。
抗痙攣剤のため、効き過ぎれば脳の働きを抑えて、意識レベルの低下やめまい、ふらつきなどの症状をおこします。
結局、約一ヶ月に10回の針灸治療をして痛みはきれいになくなりました。
娘さんからは「2~3回目の受診から本人も自覚できるくらい痛みが少なくなり、2ヶ月、週2回ぐらいでほぼなくなりました。」とのコメントをいただきました
(治療期間は実際は1ヶ月と数日なのですが、2ヶ月にわたったためそう記載されています)